院長のつぶやき 医学部新設って、冗談でしょ? 2010年2月23日
2月21日の朝日新聞は一面トップで医学部新設の可能性を報じた。
国際医療福祉大、北海道医療大、聖隷クリストファー大の3大学だそうだ。
こんなこと、本気で考えているのだろうか?
医師不足騒ぎに便乗した悪乗りとしか思えない。
いったん大学を造ったら、簡単にはつぶせないのだ。
経営を考えれば入学定員を削減することもなかなかできない。
20~30年先に医師過剰問題が生じて大変なことになるのが目に見えている。
経営困難に陥った大学が高額な寄付金と引き替えに出来の悪い学生を入学させる。
金で入った学生は投資の回収のため卒後せっせと金儲けにいそしむ。
過当競争のため衛生・消毒など表面に現れにくい安全面でコストダウンが行われる。
倒産したり、借金で首が回らなくなった医師に医療倫理など全く期待できない。
・・・悪夢だが、冷静に想像力を働かせれば予測できる未来だ。
しかも、残念なことに、たぶんこの予測は正しい。
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実は歯学部に既に先例はある。
1970年代、80年代に歯学部をやたらに新設した。
現在、歯科医師が余って困っている。歯科医院はコンビニより多い。
歯科医院の経営は悪化、一部の歯科医師はワーキングプアとさえ言われる。
歯学部は定員割れが目立ち、希望者が事実上全員入学できる大学もある。
それで学生の質が低下しないはずがない。
大学の造りすぎが後でツケとなってはねかえる。本当は予測できたはずなのに。
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こういう問題に関しては世論とか国民の要望とやらも怪しい。
新型インフルエンザのワクチンが典型的な例だ。
ワクチンが足りないとパニックになりかかった。
マスコミと国民がワクチンを確保しろと大合唱。
しかし、いまや緊急に確保した輸入ワクチンのほとんどが余りそう。
1千億円が無駄になるらしい。・・・ためいきが出る。
マスコミは無関係のような顔をしているがマスコミの責任も大きい。
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目先のことだけ考えていると失敗する。
余分に用意しておけばよいってものじゃない。
医師不足に対しては、当面既設の医大の定員を増やして対応するのが正解。
それなら、十分な医師数を確保した時点で定員を減らせばよいのだから。
(2010.2.23)