川本眼科だより 60三大生活習慣病 2005年2月28日
昨年の11月に、大学時代の同級生(横浜市大教授)が膵臓ガンでなくなりました。47歳の、早すぎる死でした。
昨年12月末には、同じく大学時代の同級生が脳幹出血で倒れ、現在も意識がありません。親しくしていただけにショックでした。
世間にはよくあることでも、知人や友人にこういうことがおこると、また違った感情を持つのは人として当然のことだと思います。
こういう悲しいことは、できるだけおきてほしくないものです。そういう意味で、今回は、眼科とは直接の関係は少ないのですが、「がん」「心臓病」「脳血管疾患」のいわゆる三大生活習慣病を取り上げることにしました。
がん/心臓病/脳血管疾患
「がん」「心臓病」「脳血管疾患」の3つをまとめて三大生活習慣病と呼んでいます。以前は三大成人病と呼んでいて、むしろこちらのほうが通りが良いかも知れません。今でも、生命保険のコマーシャルなどでは三大成人病と呼んでいるようです。
この3つの病気は日本人の主要な死亡原因になっています。主な死亡原因の1位はがんで31%、2位は心臓病で16%、3位は脳血管疾患で12%です。つまり、死因の6割はこのどれかになるわけです。
心臓病にもいろいろ種類がありますが、致死率が高いのは心筋梗塞です。脳血管疾患で重要なのは脳梗塞・脳出血で、2つを総称して脳卒中と言うこともあります。
これらの生活習慣病は、60歳以降でおこることが多いのですが、私の同級生のように、40歳代になればもうこういう問題と無縁ではいられません。40歳代は働き盛りで、子供もまだ小さいことが多いので、残された家族は大変です。
生活習慣病は予防できる
三大生活習慣病は、その名前の通り、生活習慣が大きく関係しています。逆に言えば、生活習慣を改善させることで発症リスク(病気にかかる確率)を減らすことができるのです。
生活習慣病に関係が深いのは、栄養、運動、休養、タバコ、アルコールの5つです。
その中でも、最も影響が大きいのがタバコです。
タバコは3病共通の危険因子
タバコは、がんの最大の危険因子です。とくに肺癌では非喫煙者に比べて発症リスク(がんにかかる確率)が20倍になるとされています。そのほか、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、鼻腔・副鼻腔がん、胃がん、肝臓がん、子宮頸部がん、骨髄性白血病が喫煙と因果関係ありとされ、発症リスクは非喫煙者のだいたい2~3倍と見積もられています。(国立がんセンターのホームページによる)
がんの治療法開発に巨費を投じるより、タバコ対策にお金をかけたほうが効果があるとさえ言われているのです。
もちろん禁煙すればがんにかかりにくくなります。肺癌の場合、禁煙して10年経てば発症リスクは約3分の1になりますが、非喫煙者と同じにはなりません。
タバコは、心臓病の危険因子でもあります。タバコを吸っていると、心筋梗塞になるリスクは非喫煙者の2~3倍になり、心臓突然死のリスクはなんと5~10倍になります。
心臓病の場合、禁煙の効果は歴然としています。禁煙して5年経てば、心筋梗塞をおこす発症リスクは非喫煙者と同じになるそうです。
タバコは、脳血管疾患の危険因子でもあります。タバコを吸うと、脳梗塞の発症リスクは約2倍になりますし、クモ膜下出血は3倍以上おこりやすくなります。(厚生労働省研究班の報告による)
やはり、禁煙して5年経てば脳卒中になる可能性は非喫煙者と同じになるそうです。
つまり、生活習慣病で死にたくなければ、禁煙したほうがよいのです。
ただし、喫煙は「ニコチン依存症」という薬物中毒なので、本人がやめたくても簡単にはやめられません。専門家に相談してニコチンパッチなどの処方を受けたり、禁煙サークルに入って苦しいときに励まし合ったりする方法が有効です。
http://www.nosmoking.jp
がんを防ぐための12か条
生活習慣病を防ぐために、そのほかどんなことに気をつけたらよいでしょうか? 財団法人がん研究振興財団は、「がんを防ぐための12か条」を提唱しています。
これは、がんを防ぐだけでなく、心臓病や脳血管疾患にも効果がありそうです。
(1)バランスのとれた栄養をとる。
(2)毎日、変化のある食生活を。
(3)食べ過ぎをさけ、脂肪はひかえめに。
(4)飲酒はほどほどに。
(5)タバコはなるべくやめ、新しく吸い始めない。
(6)食べ物から適量のビタミンと繊維質を多くとる。
(7)塩からいものは少なめに。
あまり熱いものはさましてから。
(8)こげた部分はさける。
(9)かびの生えたものは食べない。
(10)日光にあたりすぎない。
(11)適度にスポーツをする。
(12)体を清潔にする。
高血圧は心臓病と脳卒中を招く
高血圧は、心臓病の危険因子でもあり、同時に脳血管疾患の危険因子でもあります。ですから、血圧を下げることは予防のため大変重要です。
以前は「高齢者では多少の高血圧はあたりまえなので少しくらい高くてもよい」と言われていましたが、研究の結果、現在では年齢を問わず、血圧はできるだけ正常範囲に(140/90以下に)維持した方がよいとされています。
血圧を下げる薬はたくさんあります。1日1回ですむ薬が便利でしょう。どの薬がよいかは内科の医師とよく相談して下さい。
2005.2