院長のつぶやき 水素水ブーム 2016年4月1日
水素水なるものがブームだそうだ。
ちょっと気になって調べてみたが、どうも胡散臭い。
現時点で、明確なエビデンスはなさそうだ。
様々な商品が出ているようだが、効果はきわめて疑わしい。
薬の場合と比較して考えてみよう。
水素水は、薬になり得る候補としてリストアップされた程度の段階。
これから、安全性、効果、副作用を調べる必要がある。
薬の場合、そのために長期間の厳密な臨床試験を行う。
10年以上かかることが普通だ。
有望視された薬候補でも、検証に耐えきれず、多くは開発が頓挫する。
初めは分からなかった致命的な欠点が露呈するからだ。
初期段階で検討された化合物の3万分の1しか薬にならない。
ヒトでの臨床試験にこぎつけるのはごくわずか。
臨床試験をはじめた薬候補でも、そのうち8%しか薬にならない。
水素水は、まだ海のものとも山のものとも付かない段階の候補薬でしかない。
それを使うのは人体実験みたいなもの。
ありがたがって、金を払うだけの価値があるとは思えない。
何の効果もない可能性は高いし、副作用があるかも知れない。
水素水の効果は活性酸素を消去する「抗酸化作用」だと考えられている。
しかし、体内での水素の動態や排出など不明点が多い。
これから研究してみようという段階でしかない。
抗酸化作用なら、効果が既に明確に証明された物質がたくさんある。
ビタミンC、ビタミンE、βカロテン。
ポリフェノール、リコピン、カテキン。
こういう物質にはエビデンスがたくさんある。折り紙付きなのだ。
訳の分からない代物に手を出すより、効能が確実なこちらをお勧めする。
水素水をのむより、コーヒーや緑茶をのむほうが健康に良いと思う。
ビタミンのサプリも、積極的には勧めないが、水素水よりすっとましだ。
(2016. 4.01)