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川本眼科だより

川本眼科だより 299目薬のさし方 2024年12月31日

年の初めに、基本中の基本、目薬のさし方を取り上げてみたいと思います。

目薬が上手にさせない、何度も失敗を繰り返して早く目薬がなくなる・・そういう声をよく聞きます。そういう目薬が苦手な方に、失敗の少ない点眼方法を伝授いたします。

間違いだらけの点眼法

今回、目薬のさし方を解説したイラストをインターネットで検索してみました。驚いたことに、ほとんどすべてのイラストに問題があります。いや、こんなさし方をしていたら失敗が多くなるのも当然です。

一番目の間違いは、目薬を斜めにしてさすように描いていることです。これではダメです。

二番目の間違いは、手をフリーにしたままでさそうとしていることです。支えが必要です。

三番目の間違いは、しっかりまぶたを開いていないことです。全くあけていないか、下まぶただけ下に引いています。

もちろん、どんなさし方でも、目に入りさえすればOKです。百発百中でさせているなら文句を言う筋合いはありません。たぶん、若い人ならイラストに描かれたさし方でも普通にさせてしまえるでしょう。でも、歳を取れば取るほど成功率が下がってくるはずです。なるべく、失敗が少ない方法でさしましょう。

目薬はまぶたに触れてはダメ

どうしてもさせないため、下まぶたに目薬を接触させてさしている方がいらっしゃいます。黒目を傷つける危険、目薬が汚染されて感染を起こす危険がありますから、絶対に止めて下さい。

じわっと1滴、黒目を狙う

目薬をさすときには、点眼びんをじわっと押して1滴落下させます。2滴以上さす必要はありません。ましてや、ぎゅっと圧をかけて噴射させるわけでもありません。自然落下です。

どこを狙ってさせばよいのでしょう? 患者さんにお尋ねしたら、「目頭」とか「下まぶたと目玉の間のくぼみ」とかお答えが返ってきました。目薬はどこにさしても結局は全体に広がりますから、別にどこにさしても大丈夫です。ただ、何もことさらそんなに狭い所を狙う必要はありません。黒目のど真ん中を狙って下さい。一番狙いやすいはずです。

目は天井を向き、目薬は垂直に

さあ、自然落下で黒目にさすとして、どのような姿勢ならさしやすいと思いますか? 目が前の方を向いた状態ではさしづらいですよね。首を後ろにのけぞると多少さしやすくなります。最もさしやすいのは・・そうです!目は天井の方をしっかり向いて下さい。

目薬は地面と垂直になるように持って、真上からさして下さい。この位置関係なら、まず失敗しません。

寝転んでさすのがお勧め

座っていても、目を天井の方に向けることはできます。でも、そのためには首を相当のけぞらなければなりません。高齢になるとこの姿勢はつらいです。長時間この姿勢を続けられません。

寝転んでさすのがお勧めです! だまされたと思ってお試し下さい。自然に目は天井を向きます。面倒くさいようでも、急がば回れです。1回で確実に点眼できたほうが何度も失敗するより結果的に楽です。

もちろん、外出時などは寝転ぶわけにはいかないかも知れません。ただ、いったんコツをつかむと座位でも成功しやすくなるようです。

指で支えて手を安定

目薬は利き手の親指と人差し指で挟みますよね。薬指で下まぶたを下に引いて下さい。中指でも構いません。

目的は2つ。目を大きく開くことと、手を安定させることです。手を浮かせているとふらふらして狙いが定まりません。指を置けばはるかに安定します。その上、目に目薬を近づけるときコントロールしやすいです。近づければ近づけるほど的から外れにくいです。

そして、このやり方なら利き手と反対の手が空いていますよね。空いている手の中指(他の指でもよい)で上まぶたを上に引きましょう。上下に引かれて目が大きく見開きます。こうなれば的が大きくなって、目薬が外れません。しかも、まばたきを止めることができます。

げんこつ法と比べると

同じ目的で「げんこつ法」というさし方があります。利き手と反対の手でげんこつを作り、げんこつで下のまぶたを下に引き、げんこつの上に利き手を乗せて安定させます。

げんこつで安定させるのも、薬指を使って安定させるのも、目的は同じで効果もほとんど変わらないと思います。

げんこつ法の最大の問題は、上まぶたを引き上げていないことです。高齢になると上まぶたが下がって黒目の一部が隠れます。さらに、点眼が苦手な方は、目薬をさそうとする瞬間に、怖いので反射的に目をつぶってしまいます。上まぶたを指で開けておく必要があるのです。

まとめ

私が推奨する点眼方法をまとめます。

1.寝転びます。目を天井に向けます。
2.利き手の親指と人差し指で目薬を挟み、地面 に垂直に保持。薬指で下まぶたを下に引きます。
3.反対の手の中指で上まぶたを上に引きます。
4.目薬はできるだけ黒目に近づけます。
5.目薬の先端はぼけているものの何となくわか るはずです。なるべくその先端を見ます。
 (反対側の目は閉じていてOKです)
6.じわっと押して目薬を1滴落とします。

(2024.12)