川本眼科だより 15目薬あれこれ 2001年5月31日
目薬はいつまでもつものでしょうか。
目薬は冷蔵庫に入れておいたほうがよいのでしょうか。
目薬のびんが固くてなかなかさせないのですが。
目薬をさすのが下手で、いつもこぼしてしまうのですが。
目薬は使い始めて1ヶ月
目薬がいつまでもつのか、というのは非常に多い質問です。
未使用の目薬でしたら、保存状態さえよければ原則として「有効期限」まで大丈夫です。熱い夏の日に車の中に放置するとか、直射日光にさらすとか、保存状態が悪い場合は別です。有効期限は目薬のびんに数字で書いてあります。細かい字なので読みにくいですが。
使用開始後は1ヶ月までです。なぜ1ヶ月かというと目薬の中が細菌で汚染される可能性を懸念しているのです。使用開始して30日後の目薬を調べたら約半数に細菌が見つかったという調査報告があります。目薬をさすときまつげなどにあたってしまうためと考えられています。一応、防腐剤は入っているのですが、なにしろ目にさすものなので、それほど濃い濃度の防腐剤を使うわけにはいかないのです。
実際には、この期間を過ぎても問題なく使えるケースは多いと思いますが、万一のことを考えてやめておいたほうが無難です。賞味期限を大幅に過ぎた食品は食べる気がしませんよね。同じことです。
厳密には、目薬の種類によってもいつまでもつかは変わってくるはずですが、複雑になりすぎますので、どんな目薬でも「使い始めて1ヶ月」が限度と覚えておけば間違いありません。
使い始めたら冷蔵庫へ
目薬を冷蔵庫に入れておいたほうがよいかどうかもしばしば受ける質問です。
目薬には、「室温保存」のものと「冷所保存」のものがあります。もちろん、冷所保存のものは
冷蔵庫に入れておかなければなりません。ものによって15℃以下とか10℃以下とか指定が異なりますが、冷蔵庫なら5℃くらいですからどれでも大丈夫です。
もっとも、冷所保存であっても、室温のまま使用してもさほど問題が生じるわけではありません。
たいていは、温度が高いと有効成分が分解しやすくなり、時間とともに濃度が下がるために冷所保存の指定がしてあるのです。
しかし、室温に数日間放置したぐらいでは濃度の低下はごくわずかですからご安心ください。つまり、旅行中冷蔵庫に入れずに持ち歩くくらいはさしつかえないのです。
では、室温保存の目薬は冷蔵庫に入れる必要はないのでしょうか。
実は、室温保存の目薬でも、使用開始後は冷蔵庫に入れておいたほうがよいのです。使い始めるとまつげにあたって目薬の中に細菌が入り込む可能性があるからです。食品を冷蔵庫に入れておいたほうが長持ちしますよね。それと同じ理屈です。
つまり、室温保存か冷所保存かを問わず、使い始めたら冷蔵庫に入れたほうがよいのです。
ただし、目薬は決して凍らせないでください。凍ってしまった目薬は、もう使うのをやめたほうが無難です。
目薬の底をたたいてみる
高齢になると指先の微妙な力加減が難しくなる ので、目薬が上手にさせないという訴えが多くな ります。 目薬のびんの固さが、種類によってずいぶん異 なるのは事実です。中には結構固いものがあり、 「柔らかい材質のびんに替えてほしい」という要 望をいただくことがあります。しかしながら、今 日では、目薬は工場で十分な衛生管理の元にびん づめされてくるものなので、中身を別のびんに入 れ替えるのは細菌汚染の心配があり、やめたほう がよいでしょう。 目薬によっては、横は固いが底は比較的柔らか いという設計になっていることがあります。この 場合、目薬をつまんで押そうとすると固くて出に くいのですが、底を人差し指でトントンとたたい てやると簡単に出てくることがあります。参天製 薬の目薬に多いようです。お試しください。
顔を天井に向けてさす
「目薬をさすのが下手で、何回も失敗する」と いう訴えも多いものです。 拝見すると、ほとんどまっすぐ前のほうを見た ままさそうとしていらっしゃることがあります。 これでは若い方が試しても難しいでしょう。 目薬をさすときは、あたりまえですが顔を天井 に向けましょう。座ったまま顔を天井に向けるこ とが難しければ、寝た姿勢でさすのも一案です。 そして、目薬の先がまっすぐ下を向くようにし て、できるだけ目と目薬を近づけてさします。目 薬の先をしっかり見つめるようにすれば、目薬を 落とすだけで黒目のど真ん中に命中するはずです。 目薬を目頭にさすのか目尻にさすのかという質 問をいただくこともありますが、まぶたの間に入 ればどこに入っても大差ありません。 もちろん、まつげにはさわらないよう注意しま しょう。
目薬の外側の包装は捨ててよい
最近、目薬の外側に包装がついてくることが多 くなりました。これは、目薬を開封したか未開封 かを区別しやすくしているのです。目薬に異物を 混入させて製薬会社を脅迫した事件以後、とくに 目立つようになってきました。 この包装の一部を後生大事につけたままにして いる方が多いのですが、あまり意味がありません。 包装は捨ててしまってかまいません。
こぼれた目薬は拭き取る
目薬をすると、どうしても余った分はあふれて きます。 この目薬が乾くとめやにのようになることがあ ります。また、目薬がまぶたに残っていると、人 によってはまぶたがかぶれてしまうことがありま す。最近の緑内障の目薬には、皮膚に色素沈着を おこすものがあります。 こぼれた目薬はできるだけ拭き取っておくのが 原則です。
2001.5