川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 30結膜炎 2002年8月31日

結膜炎と言っても、実はいろいろなものがあります。
 
多いのは、細菌性のもの、ウイルス性のもの、アレルギー性のものですが、そのほかにもさまざまな結膜炎があるのです。
 
原因によって、治療法も注意点も異なります。

結膜の炎症はすべて結膜炎

結膜炎という言葉はよくお聞きになることと思います。私(院長)も、患者さんに「結膜炎ですね」と説明することが多いですね。
 
しかし、実は、結膜炎といってもいろいろなものがあります。原因によって分類され、それぞれ治療法も注意点も異なるのです。
 
結膜の炎症はすべて結膜炎と呼ばれます。炎症というのは、充血したり、めやにが出たり、まぶたの裏側が腫れたりすることとお考え下さい。
 
こういうことは、細菌やウイルスによっておこりますし、クラミジアとかアカントアメーバなんていう病原体でもおこります。一括して「感染性結膜炎」などと呼ぶこともあります。
 
しかし、結膜炎は必ずしも細菌やウイルスの感染によってだけおこるわけではありません。感染によらない結膜炎として代表的なのは、アレルギー性の結膜炎です。スギの花粉によるものやハウスダスト(家のほこり)によるものが有名ですね。
 
そのほか、紫外線とか、酸・アルカリとか、涙液減少による結膜炎などもあるのですが、患者さんの誤解を避けるため、結膜炎という言葉を使わずに説明するのが普通です。

ウイルス性結膜炎

ウイルス性結膜炎は、一般の方が「結膜炎」という言葉を聞いたときイメージする病気だと思います。
 
1~2週間くらいで治ることが多いですが、1ヶ月くらいかかってしまうこともあります。
 
人から人に感染し、とくに、アデノウイルスやエンテロウイルスによる結膜炎は俗に「流り目(はやりめ)」と呼ばれ、感染力が強いので注意が必要です。患者さんが目を触った後でドアの取っ手を触り、別の人がそのドアの取っ手を触った後で自分の目を触ると、それだけでうつってしまいます。もし患者さんが絶対に自分の目を触らなければ感染はおこりませんが、実際にはなかなか難しいでしょう。
 
感染を防ぐため、手洗いを励行したり、タオルを共用しないようにしていただきますが、それでも完全な感染防止は困難です。
 
そこで、幼稚園・保育園・学校をお休みしていただくことになります。一般に、感染力の強い時期はめやにが多く、めやにがおさまればだいたい安心してよいでしょう。
 
問題は、ほかの結膜炎との鑑別が難しいことです。結膜炎はすべて充血やめやにが症状になりますから、それだけでは鑑別ができません。典型的な症状がそろっていれば診断は容易ですが、実際には判断に迷うケースが多いのです。
 
培養などの方法でウイルスを証明すれば確実ですが、診断に何日もかかりますから臨床の役に立ちません。
 
その場でわかる迅速診断キットというものがあります。陽性ならだいたい診断は確実なのですが、ウイルス性結膜炎でも50%くらいしか陽性にならないので、陰性でも否定できないことになります。陽性例は、症状だけでも診断できることが多く、残念ながらそれほど有用とは言えません。
 
ウイルス性結膜炎を見逃すと、感染が拡がってしまい、社会的影響が大きいので、判断に迷うケースはウイルス性結膜炎として扱っています。

細菌性結膜炎

ちょっとバイ菌(細菌)が入ってしまったという結膜炎は非常に多いですね。とくに小さなお子さんでは目をかまってこすったりすることも多いですから、よくあることと言っていいでしょう。風邪のようにありふれた病気です。
 
細菌には抗菌剤(抗生物質)の目薬がよく効きます。数日で軽快することも多いのですが、細菌をしっかりやっつけておかないとぶりかえすおそれがありますから、よくなっても何日かさし続けておいたほうがよいでしょう。
 
最近は抗菌剤が効かない耐性菌が増えていると言われています。怖いですね。

アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎は感染しない結膜炎の代表的なものです。結膜炎というと「うつるもの」というイメージが強いので、誤解を避けるために結膜炎という言葉を使わず、「結膜アレルギー」と言うこともあります。
 
花粉、ハウスダスト(家のほこり)、カビ、動物の毛、その他さまざまなものが原因になります。コンタクトレンズに付着した涙液中のタンパク質が原因、なんてこともあります。
 
身近に原因があると、目に入ってくるのを防ぐことは困難です。ゴーグルのようなメガネをすればいいのでしょうが、気恥ずかしくてかけられないでしょう。したがって、長期にわたって治療を続けなければならないことが多いですし、軽快しても結膜におきた変化がなかなか完全には消失しないですね。
 
スギ花粉症のようにかゆみが特徴の場合もありますが、必ずしもかゆくはなく、ゴロゴロするだけ、充血するだけということもあります。
 
かゆくて目をかいてしまうと、感染性の結膜炎との鑑別は困難になります。実際に細菌感染を伴う場合もあるので、アレルギー性結膜炎であっても、抗菌剤の目薬を使用することがあります。

経過観察が大事

結膜炎の多くは1週間くらいで治ります。でも、必ずしも簡単に治るものばかりではありません。
 
目薬さえさしておけばいいというわけにもいきません。
 
薬が効いていないと判断すれば、薬を変更しなければならないこともあります。めやにや充血が良くなっても、角膜に濁りを残しているため目薬を続けたほうがよい場合もあります。目薬に対するアレルギーや、目薬の中に含まれる防腐剤の影響が出た場合は、目薬を中止する必要が生じることもあります。
 
また、最初は結膜炎の症状で始まっても、実は角膜ヘルペスという病気だった、なんてこともあります。この場合、治療に使う薬を早く変更しなければなりません。
 
このように、経過観察は大事です。3日後くらいに受診してください。発症後時間が経っていれば少し受診間隔をあけても大丈夫です。調子が悪いときは我慢せず、早めに受診しましょう。

2002.8