川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 31老視への対処法 2002年9月30日

歳をとると、手元のものが見えづらくなります。これを老視(=老眼)と言います。もともととても目が良かった人が、45歳くらいから老眼鏡のお世話にならなければならなくなって、ショックを受けます。
 
老視はしかたのないことですが、いろいろ対処法も考えられています。

老視の原因は水晶体の硬化

目の中には水晶体というレンズがあります。目には角膜というレンズもあります。外から入ってきた光は、角膜と水晶体の2枚のレンズの働きで網膜中心部に集められます。
 
水晶体は、毛様体筋という筋肉の働きで厚みが

変わります。遠くを見るときは毛様体筋は弛緩し、水晶体は薄くなっています。近くを見るときは毛様体筋は緊張し、水晶体は厚くなります。水晶体の厚みを変えることで、ピントを合わせることができるのです。

若いときは、水晶体が柔らかく、厚みを変えることが容易なので、すぐにピントが合います。歳とともに、だんだん水晶体は硬くなり、厚みを変えることが難しくなります。そのため、毛様体筋がいくら頑張っても、近くにピントを合わせることができなくなります。これが老視です。
 
もちろん、毛様体筋の力が衰えるせいもあるのですが、最近の研究では、水晶体が硬くなることが最大の原因だとされています。白内障になるかなり前から、水晶体の老化は始まっているのですね。

近用メガネをかける

老視に対しては、まずメガネをかけることが考えられます。手元を見るためのメガネですから、近用メガネと言います。読書用メガネとも言います。俗に老眼鏡と呼ばれているメガネですね。
 
近用メガネをかけると遠くは見えづらくなってしまいますから、はめたりはずしたりする必要があります。
 
遠くも近くも見えるようにした遠近両用のメガネも一般的です。最近は、「中近」「近々」というメガネもあり、選択肢が広がっています。逆にそれだけ選ぶのが難しくなっています。

遠近両用コンタクト

遠近両用のコンタクトも出てきました。ただ、近用メガネの代わりにはならないようです。
 
遠くの見え方はふつうのコンタクトに劣ります。ふつうのコンタクトの7割くらいと考えておけば間違いないでしょう。近くの見え方も、近用メガネをかけたほうが勝ります。(詳しいことは川本眼科だより14をお読み下さい)
 
もともと長年コンタクトを使ってきた方で、仕事上、どうしてもメガネはかけたくないというような事情があれば良い選択だと思います。

老視の手術

最近、老視を直す手術が試みられています。本当なら画期的な手段です。
 
米国のシャカー博士が手術方法を発表したあと世界各地で試されたのですが、残念ながら「手術したが効果がなかった」という報告が多く、まだまだ実験段階と言わざるを得ません。将来手術方法が改良されて普及する可能性はあります。
 
また、レーザーによる切開で手術と同様の効果を得ようとする試みもあります。手術より手軽に受けられるというわけですが、全くの研究段階で、治療成績も不明です。

調節眼内レンズ

これは、白内障手術のとき目の中に入れる「眼内レンズ」にピントの調節機能を持たせようというものです。白内障手術をすることで老視も直せるという夢のような方法です。
 
既に試験的なレンズが作られています。眼内レンズが目の中で前後に動くようになっており、自分の毛様体筋(ピントを合わせる筋肉)を使ってピント調節ができます。
 
実は、私たちのグループでも既にこの「調節眼内レンズ」を試しています。手術直後には、理論通り近くも見え、かなり良い成績を得ています。
 
将来はこのタイプの眼内レンズが一般化するかも知れません。
 
ただ、可動部分のあるレンズの長期耐久性などに不安が残ります。可動部分が破損すれば眼内レンズの入れ替えが必要になるかも知れません。そういうことが実際におこりうるのか、もしおこるとすればどのくらいの確率なのか、今は誰もデータを持っていないのです。
 
いずれにしても、近い将来日本でも臨床試験が行われることになるでしょう。それが終了すれば調節眼内レンズの評価が定まってくると思います。それが何年先になるかはわかりません。それまでは使いたくても簡単には手に入りません。

※残念ながら調節眼内レンズは予定通りの効果が得られず開発が中止されました。代わりに多焦点眼内レンズが登場しました。

(→川本眼科だより100「多焦点眼内レンズ」)

2002.9