院長のつぶやき 目がくぼむ 2013年7月7日
若い女性が診察を受けにみえた。
既にいくつもの眼科を回ってきたらしい。
どこでも、ドライアイだけだと言われたとのこと。
患者さんは納得できず、遠い所からわざわざいらっしゃった。
訴えは「目が小さくなった」「涙袋がなくなった」
レーシックを受けてからそうなったとのこと。
目が小さくなり、つぶれるのではと心配していらっしゃる。
人相が変わってしまったと、今にも泣き出しそうな様子。
レーシックで目が小さくなるようなことはない、と説明した。
理屈にも合わないし、そんな報告は全くない、と。
もちろん、レーシックでドライアイは高率に起きる。
ドライアイで目を細める傾向がおきることはある。
また、痩せたりするとまぶたの脂肪が減って落ちくぼむ。
脂肪が減ればふっくらした涙袋も引っ込んでしまう。
ストレスや心労が影響して脂肪が減ることはありうる。
いくら説明しても、納得されない。
大丈夫だから安心して下さい、と言っても聞く耳を持たない。
「でも実際にそうなっている」「自分の顔だからわかる」
ご自分の主張を譲らない。説得するのは難しい。
否定すればするほど頑なになる傾向も見える。
外から目を見ても、眼球の一部しか見えない。
眼球の横幅も高さも奥行きも見た目では正確にはわからない。
実際には、まぶたの状態が印象の多くを決める。
目が大きいと感じるのは、パッチリと目が開いている状態だ。
眼瞼下垂でまぶたが下がれば小さく見える。
これが「歳を取ったら目が小さくなった」と感じる原因だ。
化粧で目の大きさの印象がずいぶんと変わるのも周知の事実だ。
まぶたがくぼみ、涙袋が平らになれば当然顔貌には影響する。
でも、眼球そのものは別に大きくも小さくもなっていない。
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まぶたがくぼむのは若い女性には悩みのタネらしい。
ネットで検索すると、悩みの相談が山のようにある。
相談しているのは圧倒的に20歳代、30歳代が多い。
遺伝の影響がその頃に出てくるのかも知れない。
10代の頃より痩せる人が多いせいもあるだろう。
中年以降は年のせい、とあきらめてしまうせいもあるだろう。
まぶたのくぼみは美容外科の恰好のターゲットになっている。
プチ整形、というらしい。
まぶたにヒアルロン酸を注入して、はい終わり。
確かに一時的には見た目が良くなるが長続きはしないだろう。
脂肪注入という方法もあるらしい。
合併症や後遺症の心配もあるから、私はお勧めはしない。
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患者さんは納得されないまま帰られた。
たぶん、また、別の眼科を探して受診されるのだろう。
あるいは民間療法や高価なサプリに走るかも知れない。
精神的に不安定になっているように見えるのも心配だ。
今後を案じつつ、1人の眼科医として無力を感じた。
(2013. 7.7)