院長のつぶやき カラーコンタクトの虚偽表示問題 2014年5月25日
カラーコンタクト(カラーCL)はトラブルが多い。
これは眼科医の常識だ。普通のコンタクトの10倍くらい多い気がする。
理由は2つあると思う。
1つは、若い女性が正しい知識を持たないで無茶をする問題。
ネット通販で「安いが粗悪な」製品を買う。
定期検診を全く受けない。
ケアも自己流できちんとしていない。
友人に勧められて安易に手を出す。
「大丈夫だよ。簡単だよ。教えてあげるよ」
ただ、その友人も正しい使い方は知らない。危険千万。
もう1つは、着色剤がレンズ表面に露出している問題。
着色剤は角膜側に露出しても、まぶた側に露出しても、問題を起こす。
角膜のキズやら、アレルギーやら・・ 感染も起こしやすくなる。
だから、着色剤は露出していてはダメ。
着色剤が内部に封入され、外に露出していないものなら安全。
眼科医はそのように患者さんに説明してきた。
ところが、この点に虚偽表示が見つかった。
国民生活センターが2014年5月22日に発表した資料によれば、
調査した17銘柄中9銘柄のカラーCLが虚偽表示をしていた。
本当は着色剤がレンズ表面に露出しているのに「内部に封入されている」と。
嘘がバレた。
つまり、表示を信用するわけにはいかないということ。
着色剤をレンズの内部に閉じ込めるには技術が必要だ。
コストも高くなる。つまり、そんなに安いはずはない。
誰も知らないような会社の製品、あまりに値段が安い製品は、危ない。
もっとも、有名メーカーでも、安心とは限らない。
自社生産ならそれなりに基準があって、遵守しているはずだ。
しかし、カラーCLでは他社から仕入れて売っている場合もある。
自社できちんと検査していない可能性があるので、注意が必要だ。
なお、現在、川本眼科で処方している「ディファイン」は
国民生活センターの調査でも問題なかった。
「イルミネート」は今回の調査の対象になっていない。
個人的には、カラーCLは困った流行だと思っている。
現状だと、なるべく手を出さないことをお勧めする。
それでも使いたい方は、ぜひ、眼科医に相談して下さい。
(2014.5.25)
■参考:虚偽表示をしていたカラーCL■
Ever Color 1day (アイレ、アイセイ/台湾)
One day Aire REAL (アイレ/台湾)
Eye coffret 1day UV (シード/台湾)
L-CON aDAY pop (シンシア/台湾)
FRESHLOOK DAILIES (チバビジョン/独・米・シンガポール)
BeeHeartB MAry (メリーサイト/台湾)
BAUSCH+LOMB NATURELLE (ボシュロム・ジャパン/アイルランド)
2WEEK VUETY (アイレ/台湾)
tutti VANITY Rich (PIA株式会社/韓国)
※国民生活センターの発表による
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●追記 2014. 5.29
FRESHLOOK DAILIES についてメーカーが反論している。
http://www.alcon.co.jp/docs/nc-press-release_140523.pdf
ちなみに、チバビジョン社はアルコン社に吸収合併された。
今はアルコン株式会社ビジョンケア事業部になっている。
川本眼科にも担当者が2名で来訪し、いろいろ釈明していった。
私のホームページをわざわざ読んでいるんだと妙に感心。
着色剤部分で凹凸はなく、角膜障害は起こさないという趣旨。
現在まで着色剤に起因する障害の報告もないと力説。
ん? 発表文と担当者の説明が微妙に食い違うような・・
発表文では「レンズ表面に色素が露出しない」
これは、正面からの反論だ。でも主張だけで証拠がない。
そのことを証明する実験結果が示されなければ説得力に乏しい。
国民生活センターは電子顕微鏡写真を呈示しているのだから。
担当者は「たまたま露出したとしても障害を起こさない」
それって本当なのか? 他のレンズとはどう違うのか?
今日の説明ではレンズ素材と色素が一体性が強力らしい。
これも初めて聞く話。証拠の呈示が必要だと思う。
アルコン社が信用を重んじるメーカーだということは認める。
FRESHLOOK DAILIES が重篤な眼障害を起こしたという話も聞かない。
得体の知れない弱小メーカーと一緒にされたことは同情する。
でも、逆にアルコン社ほどの世界的大メーカーならではの責任がある。
着色剤が絶対に露出しない製品を作ってほしい。
アルコン社の技術力ならそれは可能なはずだ。
「行政が医療機器承認した」で満足してもらっては困る。
もっと高いレベルの安全性を追求する姿勢を、強く期待する。