川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき患者様って変な言葉

京大病院が「患者様」という呼称を廃止するそうだ。
朝日新聞によると、「違和感がある」「馬鹿にされている感じがする」という
声を受けての決定だという。
国語学者の金田一春彦氏が「患者様という言葉はおかしい」と著書で
指摘したことが見直しのきっかけらしい。

私も、「患者様」という言葉が使われ出した当初からうさんくささを
感じていた。
慇懃無礼で相手を近づけさせない冷たさを感じる。
それに、なんだか「いらっしゃい、いらっしゃい。こちらの商品は
いかがですか」と揉み手をしながらお客を呼び込んでいる商人の
においがする。

私の記憶では「患者様」なる言葉を提唱したのは接遇コンサルタントと
言われている人たちだった。この人たちは、もともとホテルマンや
客室乗務員などサービス業のプロで、自分がいた業界の考え方を医療にも
導入しようとした。
確かに古い医療人に斬新なものの見方を提示した功績はあるが、
一方で医療の特殊性を誤解ないし軽視していたことは否めない。

そもそも、医師がそんなにへりくだり、卑屈な姿勢を取ることが
よいことなのかどうか。
医療は他のサービス業とは違い、患者さんが嫌がることや避けたいことでも
受け入れていただかなければならない。時には説得したり、
叱責したりすることも必要なことがある。
「良薬は口に苦し」と言う。苦い良薬を飲まなければ治らないのに、
「患者様=消費者は神様」だとして「そんなことを押し付けてはいけない」と
いうことになったら治療はできない。現実に、今それに近いことがあちこちで
おきている。

患者が上で医師が下という関係では、医療は成り立たないのだ。
基本的に、患者と医師は対等な立場で向き合い、医師が専門家として
助言や指導をするというのがあるべき姿だろう。
「患者様」という言い方は発想の根底で間違っていると思う。
京大病院の英断にエールを送りたい。

(2007.5.15)

院長のつぶやきダイヤモンド

ネタを思いつかないので、今回は眼科の話ではなく、ダイヤモンドの話を
書くことにした。女性の方は好きですよね。

「ブラッド・ダイヤモンド」という映画を見てきた。
映画の内容について何も予備知識はなく、広告の写真からスカッとする
冒険活劇だと思って見に行ったのだが、アフリカの現状を告発した
なかなかシリアスな映画だった。考えさせられた。
報道などで知識として知ってはいても、実際に映像として見せられのは
やっぱり違う。百聞は一見にしかず。
ダイヤを買うと、アフリカでの殺し合いに加担しているかも知れない、
という怖いお話。

それにしても、なぜみんながダイヤを欲しがるのだろう?
これは世界最大のダイヤ加工・流通・卸売業者であるデビアス社の
イメージ戦略が成功したからだという。婚約・結婚指輪の理想だという
神話が、ダイヤの需要を支えている。

しかし、実はダイヤの価値というのは砂上の楼閣かも知れない。
デビアス社はダイヤの価格を国際的に統制するシステムを作り上げ、
そのためにダイヤの価格は人為的に高く維持されているという。
本当は世界的に供給過剰が続き、自由競争に任せたらダイヤの価格は
大暴落すると予想されている。

ダイヤはもともと炭素というありふれた元素からできている。
技術の発達の結果、宝石用のダイヤでも現在は生産可能だ。
もしも劇的にコストダウンができて、大量に人工の宝石用ダイヤが
生産されれば、ダイヤの価格が大暴落することは間違いない。
今日10万円で買ったダイヤが、10年後には1万円の価値もない、
ということは十分にありうることなのだ。

宝石というのは、金銭的価値が持続すると信じて買うと間違いだと思う。
単純に「好きだから」「きれいだから」ということで、完全な消費として
買うのが正しい。
そうするとあまり高価なものは買えないけれど。
婚約指輪に給料の3ヶ月分もかけるのはバカだと思うよ。

そんなわけで、私が妻にダイヤを買ってやらないのは、別に妻を
愛していないからではない。ダイヤを買うことがアフリカでの紛争を
助長することにつながるかも知れないからであり、ダイヤの永続的価値に
疑問を感じているからなのだ・・・(ほんとかな?)

(2007.4.9)

院長のつぶやき花粉症の季節

今年(2007年)はスギ花粉の飛散は少ないという予測だった。
ふたを開けてみたら、花粉の量は例年よりむしろ多く、川本眼科にも
花粉症の患者さんが大勢来院される。眼科の患者さんは冬には少なく、
毎年花粉症とともに忙しくなるのだ。一足早く春の訪れを感じる。

患者さんが多いのはありがたいことだ。
その反面、混雑して待ち時間が長いという苦情もいただく。
待ち時間短縮には医師の説明を省くのが最も即効性があるのだが、
それでは患者さんは満足されない。
短時間で要領よく説明することに心を砕く。

検査スタッフの手もなかなか回らない。季節によってスタッフの数を
増減させるのが理想だが、現実問題として難しい。コンビニのバイトと
違って全くの未経験者が急にできる仕事ではないからだ。
そのうえ、子持ちのスタッフがほぼ半数を占めているから、卒業式・
父兄参観日・子供の病気などで休みを取ることも多い。

先日は4人お休みというピンチになった。
1人は眼科医会のスタッフ講習会への参加だから診療優先にすることも
できたが、スタッフの勉強も大事と考えて講習会に行かせた。
予約を入れない、検査を減らすなどの対策でなんとか乗り切った。
正直、ひやひやの綱渡りだった。

花粉が多いと実は私も憂鬱だ。私自身重症の花粉症なのだ。
スギ花粉の飛散が始まると、私は外出時完全防護にする。
マスクはもちろん、ゴーグル(花粉症予防のオーバーグラス)をはめ、
花粉のつきにくいつるつるのコートを着て出かける。
まるで変質者のような格好だがしかたない。目薬は3種類を併用し、
のみぐすりも飲み、点鼻スプレーも使う。この生活が2ヶ月は続く。

これだけの対策をとるとさすがに効果はある。花粉症の季節でも
それほどふだんと変わらない生活ができる。何の対策もしていない家内は
鼻水ぐずぐずで目をかゆがっている。もともとは家内のほうがはるかに
軽症なのだが。
医者の不養生とはこのことさ。天は自ら助くる者を助く。

(2007.3.10)

院長のつぶやき特殊な事件は特殊な家庭でおこるのか?

歯科医の次男が妹を殺したという事件が話題になっている。
次男は歯学部をめざして三浪中で、妹は芸能界で明日のスターを夢みていた。2人は仲が悪かったらしい。

事件の報道や論評は多い。
そのほとんどは、「特殊な家庭だから特殊な事件がおきた」という考え方だ。
次男の性格や性癖がもともと悪かったのだとか、妹が高慢で平気で人を傷つけたとか、親が子供に歯科医になれと強制したのが悪いとか、親が放任主義だったのが悪いとか・・・
だが、本当にそうなのだろうか?

私の見方は異なる。
この一家も、どこにでもありそうな平凡な一家だった。
親は、もちろん子供が歯科医になることを望んだに違いない。でも子供の成績が悪くて入試に受からない。よくある話だ。そもそもすでに長男が歯学部に進んで いたのだから、次男が歯科医になって後を継ぐ必要性は薄かったと言える。

兄弟が不仲で会話らしい会話がなかったというのも、そんなに珍しい話ではない。親は何をしていた、という人もいるが、すでに成人になっている子供に親が説教をしたってどれだけの効果があったろうか?

妹が勝手に芸能界に入り、無断外泊をすることもあった、という。私も自分の子ならきつく叱るだろうが、でも近頃そんなことはよくあることではないか?

つまり、どこをとってもそれほど特殊だとは思えない。どの家庭も大なり小なり何らかの違いはあるわけで、それだけの話だ。完璧で何の問題もない理想的な家庭などありはしないのだから。

特殊な事件に出会うと、家庭に問題があったときめつける人は多い。わか りやすくてなんとなく納得しやすいし、そのことで、自分は大丈夫、自分の家庭は大丈夫と安心できるからだ。
でも、実はそうではなく、平凡などこの家庭にも潜む闇の部分がたまたま表に現れたと考えるほうが真実に近い、と私は思う。

院長のつぶやき木を見て森を見ず

マスコミの報道の中には、部分だけクローズアップして、全体が
どうなっているか考えていないことが多い。
「木を見て森を見ず」というやつだ。

例えば、「プロ野球○○チームの優勝で、経済効果は○○億円」などと
報道する。もちろん、優勝チームの地元では気分がよくなって消費が
増えるかも知れない。しかし、優勝できなかったチームの地元では消費は
低迷するに違いない。それに、収入が同じなら、あるところでたくさんお金を
使ってしまった人は、別のところでは支出を切りつめるしかない。
だから、プロ野球でどこかのチームが優勝したからといって、日本全体では
そんなに経済効果があるはずがない。

少し前にはシンドラー社のエレベータ事故に関する報道に疑問を感じた。
シンドラー社が初期対応を誤ったこともあって、シンドラー社だけが悪者に
仕立てあげられて、シンドラー社のエレベータで不具合があった事例が
連日報道された。しかし、ちょっと想像力を働かせれば、エレベータの
不具合なんて、他社でもいくらでもおこっているに違いない。
不具合の発生頻度を比較しなければ意味がないのだが、そういう地道な
調査に基づく報道は私の知る限り全くなかった。
そもそも、他社での不具合はほとんど報道されなかった。

医師不足という報道も同じである。確かに地方や産科・小児科における
医師不足はある。しかし、同時に、開業ラッシュがおこり、都市部の
開業医などはむしろ過剰になっていることは報道しない。国が医師養成を
怠ってきたと主張するのだが、医師の数が一貫して増加し、少なくとも
数年前まで医師不足がそれほど問題になっていなかったことには目を
つぶる。

マスコミは悪玉を仕立てて勧善懲悪的な話にしてしまったり、ものごとを
極端に単純化してしまう傾向がきわめて強い。世の中にそんな単純な話は
少ないのだが。
マスコミがバイアスになって事実を歪めていることに注意しなければ
ならない。

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