川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき学会と休診

医師にとって、学会は貴重な勉強の場だ。
医学は日進月歩だから、遅れないように一生勉強を続けなければ
ならない。

ただ、開業医にとっては、学会に出かけること自体なかなか難しい。
勤務医時代には海外で行われる学会も含めて少なくとも年に5~6回は
泊まりがけで学会に行っていた。しかし、最近ではせいぜい年に
2回くらいしか行けない。

なぜかというと、最近の学会はたいてい金・土か木・金・土にある。
病院はほとんど土曜休みなので問題が少ないが、川本眼科は土曜も
診療日だ。学会に行きたければ休診にするしかない。

しかし、休診にすれば、必ずと言っていいほど患者さんからクレームが
来る。「せっかく来たのに休みだった」と。
一応、約1ヶ月前から留守電で休診案内を流しているし、
院内掲示もするし、お知らせもお渡しするのだが、医院の休診日なんて
みんな覚えてはいないのだ。

今回の臨床眼科学会も、私だけが途中から参加、家内は留守番となった。
本当は学会くらい、制約なしに行きたいのだが。

院長のつぶやきマスコミ報道と編集

先日、NHKの取材を受けた。
半日くらいカメラを回していったのだが、実際に放映されるのは
3分ほどだそうだ。
編集作業でほとんどは捨てられ、番組の趣旨を伝えるのに効果的で
印象的なところだけが残るわけだ。

今回の取材は友好的なもので特に問題はないのだが、後からよくよく
考えて、こういうマスコミが編集権をすべて握っているやり方って、
結構危ういように思えた。

言葉というものは文脈によって意味が変わる。編集されると、本来の
発言の意図とは全く別の受け取られ方をする心配がある。話の前提が
抜け落ち、複数の考え方を示しているのに1つだけが強調されたりする。
編集者が悪意を持っていれば、どのような番組でも作れそうだ。
まともな主張はあえて無視し、失言だけをつなげれば悪役を仕立て上げる
ことだって簡単だ。

テレビを見るときは、編集者の意図や裏の事情に十分注意し、
映像だからといって盲目的に信じ込むことのないようにしたいものだ。
テレビに踊らされる「愚かな大衆」にならないために。

院長のつぶやきトイレ

川本眼科の待合室にあるトイレは身障者対応になっている。
ドアも引き戸になっているし、手すりもつけた。
赤ちゃんのおしめ替えもできるようにしてある。
そして、車イスで中に入り、中で転回可能な広さを確保した。
洗面台の下方に空間を設け、車イスでも手が洗えるようにした。
川本眼科の入り口には段差がない。土足で入れる。
医療機関の責務としてハンディがある方への配慮を心がけた。

一方で、失ったものもある。
身障者トイレと別に普通のトイレを作ることは無理だった。
なんとなくだだっ広い空間で落ち着かないという意見も聞く。
男女別にもできなかった。女性は、男性用小便器が気になるようだ。

最も重大な問題は、トイレが1つでは足りないようなのだ。
患者さんの数が増えるにつれ、この問題は深刻になってきた。

車イスの方が受診されることはそう多くない。
現実問題として、普通のトイレのほうが便利だったのかも知れない。
それでも、多くの身障者がトイレ問題のために外出を控えているという
日本の現状を知っているから、身障者対応のトイレは必須だった。
かと言って、普通のトイレの増設も難しい。ただでさえスペースは足りない。
隣の土地でも手に入れば話は別だが・・

たかがトイレ。されどトイレ。
なかなか良い解決策が見つからなくて、正直なところ困っている。

院長のつぶやきジダンの頭突き

ワールドカップ・ドイツ大会が終わった。
決勝で、フランスのジダンが相手選手を頭突きして退場させられた。
MVPに輝いた選手の愚行として非難されている。
一般に日本では、暴力をふるったほうが絶対的に悪いとされる。
だが、私の見方は異なる。

確かに暴力行為はよくない。だが、言葉による暴力というものもある。
イタリアのマテラッツィはジダンを侮辱・挑発したようだ。
しかし、そのことには何のおとがめもない。
ジダンは退場させられて、フランスは負けた。既に罰は受けている。
マテラッツィはフランスの中心選手を挑発して、退場に追い込んだ。
そのことによって勝ち得た優勝には道義的に疑問符がつく。
優勝を素直に賞賛できないのは私だけだろうか?

それぞれの国は自国選手を擁護している。これはしかたがない。
これほど衆人環視の中でおこったできごとでも見方は驚くほど異なる。

マスコミが流す一面的な物の見方には、常に懐疑的に接する必要がある。
そうでないと、だまされる。

<追記>
この文章は、事件がおこった翌日に書いた。
私が読んだマスコミの論調は完全にジダン非難一色だった。
しかし、私と同じことを考えた人は多かったらしく、その後の記事は
ジダンに同情的なものが多くなっている。

院長のつぶやきチカチカ、チバチバ、ペチャペチャ

日本語には擬声語、擬態語が多い。
ピカピカとかゲラゲラとかワンワンとかザーザーとか、とにかくたくさんある。
擬声語、擬態語は日本語の表現を豊かにしているし、しかも微妙に表現を
工夫して細かな違いを表すこともできる。
確かに便利なのだが、反面、あいまいになりやすいという欠点もある。

診察のとき自覚症状を説明するにも、こういう言葉は多用される。
「目がゴロゴロする」と言えば、ふつうは目の中に何かゴミでも入った
ような感覚があることを表現している。専門用語では「異物感」だ。
実際にはゴミはなくて角膜のキズだけのことが多いが、
症状を一言で言い表すことができて便利この上ない。

だが、1つの擬態語がいくつか違った意味に解釈できることもある。
例えば、「チカチカ」という言葉は、とがったもので刺されたような
感覚を表現することもあるし、光が見えている状態を表現することもある。
患者さんと医師が、お互いが別のことを想像して誤解を生むことが
あるから気をつけなければならない。
できるだけ、「チクチク」とか「ピカピカ」とか言い換えたほうが
間違いは少ないだろう。
もっとも言葉にこだわる方もいらっしゃって、
「いや、チクチクではなくチカチカなんです」と言われることもある。
確かに、微妙に違うのはわかる。だが、小説を書くのと違い、
診療上は言葉の違いにこだわってもあまり意味はなさそうだ。

「モヤモヤ」も難しい。かすんでぼやける状態を表現していることが多いが、
いわく言い難いような目の違和感をモヤモヤと表現する方もいらっしゃる。
頭がぼーっとしてはっきりしないことを表現していることもある。
質問してそのあたりを明確にしようとするのだが、患者さんにしてみると
もともと微妙な感覚なので別の言葉に直すのが難しいこともある。
「モヤモヤは、要するにモヤモヤなんです」などと言われて困ることもある。

「チバチバ」「シバシバ」というのもある。
とくに「チバチバ」は私が千葉県の旭中央病院にいたときに初めて
聞いた表現で、最初は千葉県の方言かと思った。実際には、
かなり広い地域で使われているようだ。
患者さんにとっては便利な表現で、目のあたりの違和感・痛み・
かゆみなどの自覚症状をすべてこの一語で表す。 しかし、あまりに
広い範囲をカバーする言葉なので、どういうことを訴えているのか
把握しにくく、厄介だ。
「目の調子が悪いんです」と言っているのと大して変わらない。
結局、具体的に細かい症状を聞き出す必要がある。

自分自身もいろいろな意味に取れる曖昧な言葉を使っていないか、
自戒したいと思う。

カルテに書くとき、「ゴロゴロ」を「異物感あり」と書いてしまう医師も
多いようだが、私は、患者さんの言葉は、なるべく患者さんが表現した
通りに書くことにしている。医師が無理に解釈することで、細かい
ニュアンスが伝わらなくなることを恐れるからだ。
同じ理由で、私はカルテを日本語で書く。英語やドイツ語の実力が
ないこともあるが、やはり日本語で表現したことを英語に翻訳して
記載するのは無理があると感じるからだ。
「朝はねちょねちょしていて、昼くらいになるとぺちゃぺちゃするんです」を
どうやって翻訳したらいいのか、私にはわからない。

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