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川本眼科だより

川本眼科だより 82匿名の恥は掻き捨て? 2006年12月31日

インターネットには、掲示板やブログなど、匿名で発言できるしくみがたくさんあります。
 
匿名ならふだん言えないような本音を語れるというのは確かに利点です。しかし、匿名をいいことに、嘘やデマをばらまき、うさばらしのために他人を揶揄し侮辱するという無法地帯になってしまっています。
 
匿名の発言には、つねに批判的に接し、真偽を疑ってかかる必要があります。人間は、だまされやすいのです。

インターネットの掲示板

インターネットには、「掲示板」といって、誰でも自由に意見を書きこめるしくみがあります。普通は匿名で書きこむことができ、誰が書いたか誰にもわからないようになっています。
 
個人のホームページでも掲示板は作られていますし、企業や団体のホームページにもあります。今日では、掲示板専門のサイト(ホームページ)があり、その中でも「2ちゃんねる」という掲示板が巨大化・寡占化しています。マスコミが「インターネットの掲示板で」と報じた場合、2ちゃんねるのことを指していると考えてほぼ間違えないとさえ言われているのです。

匿名なら本音が言える

掲示板では、ほとんど全員が匿名で発言します。
 
匿名の良い点は、ふだん現実の社会では他人の目を気にして言えないようなことでも気楽に語れることです。要するに、本音が言えます。
 
例えば、自分の属する組織の問題点を世間に公表するのは勇気のいることです。そんなことをしたら上司や同僚から白い目で見られるかも知れないし、ひょっとしたら会社を辞めなければならないかも知れません。
 
実名で公的に意見を公表すれば、自分の意見に反対する人たちから抗議を受けることもあります。電話やFAXが鳴りづめで1日使えなかったなんてこともおこります。天皇制について意見を言ったら右翼が押しかけてくるかも知れません。そんな心配から黙っている人が多いわけですが、匿名ならそういうことを気にする必要はありません。
 
ですから、匿名には匿名の良さがあることは確かです。

荒らし・誹謗・デマ

しかし、匿名をいいことに、悪意のある書きこみをする人たちがいます。その場の議論とは無関係な内容を何度も何度も繰り返し書きこんだり、他人の神経を逆なでするような暴言を書きこんだりするのです。こういう行為は「荒らし」などと呼ばれています。
 
自分の気に入らない書きこみがあると腹を立て、執拗に誹謗・中傷を続ける人もいます。実社会では考えられないほど個人攻撃を繰り返すのは、相手の顔が見えない匿名社会だからでしょう。
 
デマも多発します。真偽のはっきりしない情報が多く、故意に偽情報を流すこともしばしば行われます。はじめから嘘とわかる場合はよいのですが、ほとんどは本当のことが書いてあって、中に重大な嘘が隠されている場合があり、真偽を見きわめるのは容易なことではありません。

匿名発言は信用するな

残念ながら、今日、もはや匿名の情報は信用することができません。もっともらしいことが書いてあったとしても、ありそうなことだと思っても、原則として疑ってかかるべきです。
 
去年(2005年)、中国で反日デモが繰り返されました。その原因としてインターネット掲示板の影響が指摘されています。もともと日本に対する反感があるところに、日本人の悪行に関する偽情報が何度も書きこまれ、火に油を注いだと言います。「日本人ならそういうことをやりかねない」という先入観があるので、中国では誰もがいとも簡単に偽情報を信じてしまったそうです。
 
人間は、自分の考えに反する情報は疑ってかかりますが、自分の考えに合致する情報は簡単に信じてしまうのです。
 
逆に、私たちが中国や北朝鮮の情報に接する時を考えてみて下さい。もともと自分が持っているイメージ通りの情報に接すると、真偽を正すことなく簡単に信じ込んではいませんか?

医療関係の掲示板・ブログでも

医療関係の掲示板やブログもたくさんあります。2ちゃんねるにもありますし、医療専用の掲示板もありますし、医療を扱ったブログは数え切れないほどです。発言や書きこみも活発で、非常に関心の高い分野だと言ってよいでしょう。
 
しかし、ここでも、匿名のために、いい加減な発言が目立ちます。
 
とくに掲示板では、やたら他人の発言を攻撃する人もあり、罵詈雑言がとびかい、ほとんど読むに耐えないほどです。他人がいかに不快に感じようがおかまいなしです。むしろ他人が嫌がるのを楽しんでいるようです。旅の恥は掻き捨て、と言いますが、匿名の恥は掻き捨てなんですね。
 
中にはかなりまじめな議論がされている場合もありますが、匿名の無責任さから、確認の取れないうわさ話や根拠のない憶測ばかりがとびかっていることも多いのです。
 
ブログのほうがまだましですが、これも正直玉石混淆と言わざるを得ません。相当に怪しげな内容のものが多いのは残念なことです。

実名のほうが信用できる

私は、発言者が責任をとらない匿名のメディアからはなるべく距離を置くことをお勧めします。そうでないと、デマに踊らされることになりかねません。
 
やはり、発言者がきちんと実名を名乗り、発言に責任を持つことが大切だと思います。当然、そういう人はあまりいい加減なことは言いません。書名入りの記事など、実名であれば、選別された、重要な情報を手に入れることができる可能性は高いのです。
 
ゴミ情報を読むことで貴重な時間を奪われるのは人生の損失だと思いませんか。

2006.12