川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 96OCTがやって来た! 2008年2月29日

眼科では最近OCTという機械が使われるようになりました。大病院には数年前から導入され始めましたが、高価な上に保険点数が認められていないために、診療所レベルではほとんど普及していません。

川本眼科では、昨年末、OCTを購入しました。それも、次世代型OCTと呼ばれるトプコン社の3D-OCTです。
従来より解像度が大幅に向上し、立体画像を作ることもできるようになった最新型です。  
【参考】 http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0130eyeground.html
     http://www.topcon.co.jp/eyecare/oct.html

今回はOCTとは何か、どんな利点があるのか、診療上どんな変化をもたらしたのかについてお話ししたいと思います。

OCTとは

OCTは、眼底(網膜や視神経)の断層像を観察することのできる機械です。といっても何だかよくわからないと思いますので、たとえで説明しましょう。

眼底を地面だと考えて下さい。普通の眼底写真は空から地面を撮影します。
地面の表面に現れたものは見えます。表面がでこぼこしているとか、地面が盛り上がっているとか、そういうことはわかります。でも、地面より深いところの状態はわかりません。

OCTは地層を見ることができるのです。空から眺めても地面の深いところに何が埋まっているかはわかりませんが、OCTなら見えるのです。地層の途中に水がたまっているとか、何か変なものができているということがわかります。

例えば、網膜に浮腫がおこっているとき、普通の眼底写真だと、表面が盛り上がっているからその奥に水がたまっているんだろうと推定します。しかし、OCTなら、水がたまっているところを直接撮影できます。どの範囲に、どのくらいの量の水がたまっているかも一目瞭然です。

今まで見えなかったものが見える。OCTの登場以前と登場以後で、診療のしかたも大きく変わりました。
OCTは非侵襲的で、患者さんに何ら苦痛を与えません。検査に伴うリスクも全くないと言ってよいでしょう。

OCTの歴史

OCTの歴史は浅く、1990年に日本人(山形大丹野ら)によって原理が考案されました。翌年マサチューセッツ工科大学で画像化に成功し、1997年にはハンフリー社(合併により現在はツァイス社)が最初のモデルを販売しました。

OCTの実用化は衝撃的なできごとでした。今まで想像で言われていた網膜内の病変が実際に見えるようになり、一部の病気では病態解明が一気に進みました。

黄斑円孔・黄斑前膜・黄斑浮腫などでは正確な病態把握が可能になりましたし、漿液性網膜剥離では網膜下の液体貯留が、ポリープ状脈絡膜血管症ではポリープ状病変が明瞭に描出できるようになりました。

要するに、診断の大きな助けになったのです。眼科診療上の有用性がはっきりしたことから、開発に力が入れられ、短期間のうちに次々と改良されていきました。
解像度も20μm→10μm→5μmと向上し、撮影時間も数十倍高速になりました。ついには断層像を積み重ねて立体画像にすることさえ可能になりました。最新型は当初の機種より断然性能が良いのです。

OCT検査にかかる費用

OCT検査は新しい検査なので、まだ健康保険の診療報酬点数が認められていません。眼科医会ではOCTの点数化を最優先事項として中医協に要望していますが、国の医療費抑制政策のため、点数化には待ったがかかってしまっています。

それでも、誰が見ても必要性の高い検査ですし、数年越しに要望し続けた結果、今度の改訂で認められるのではないかと言われています。点数化されれば、普及にはずみがつくでしょう。

現在は高度先進医療として、OCT検査だけ自費で徴収することが可能です。
ただ、そのためにはややこしい申請書類をたくさん書かなければなりませんし、審査も受けなければなりません。それに自費となると患者さんの負担も大きく、気軽に検査するわけにはいきません。

そこで、今のところ川本眼科ではOCT検査を無料サービスとしています。一応4月の診療報酬改定まではこのままでいくつもりですが、もし今度の改訂でも認められなければ自費徴収せざるを得なくなります。ご了解ください。

イメージネットも最新型に

OCTの導入に合わせて、イメージネットも最新型に更新しました。眼底写真や前眼部写真を保存し、患者さんにお見せするのに使っている画像データベース・システムです。

こちらは、患者さんにとっては今までの機種とそう変わるわけではありません。ただ、写真の保存枚数が増えるにしたがい動作が遅くなっていたのがスピードアップしますし、保存可能な容量も格段に拡大、立体画像のような大きなファイルでも余裕を持って処理できます。細かい使い勝手も向上しました。
今まで取り込めなかった視野も保存でき、時間を追って視野を比較することが容易になります。

最新型の導入により、患者のみなさんにより良い医療が提供できるようになります。

第2暗室

OCTはかなりの面積を占拠します。これ以上医療機器を導入しようとすると暗室スペースが足りません。そこで、奥に第2暗室を作ることにしました。
もともと奥にあった物品は、車庫をつぶし事務スペースを拡張してそこに移動することにしました。カルテの増大にも対応する必要があったので、一石二鳥です。

眼科医療は進歩が速く、次々と新しい検査機械や新しい治療手段が現れます。川本眼科は、これからも常に最新の医療を提供し続けていきたいと考えております。

2008.2