川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 118目薬の取り扱い 2009年12月31日

川本眼科通信1998年10月号に載せた記事です。 患者さんからの質問で最も多いのが目薬についての質問です。私の回答をまとめたものがこの記事です。その内容の一部は「診療ノート」にも説明してあります。

その後『川本眼科だより』15,55,91,98,99.105でも様々な角度から目薬について取り上げましたが、最初に書いたこの記事に一番大事なことが書かれています。以前の記事を目にしたことのある人は少ないと思いますので、10年ぶりにもう一度掲載することにします。

今でも当時書いたそのままでほとんど間違いはないと思いますが、現在の目で見直して部分的に書き直しました。

目薬を2種類以上さすとき

目薬を2種類以上さす時は、5分以上の間隔をあけて下さい。すぐにさしても害になる訳ではありませんが、後からさした目薬が先にさした目薬を洗い流してしまいます。

立て続けにさすと、先にさした目薬の半分くらいが流れてしまいます。もったいないですね。

でも、逆に考えると立て続けにさしても半分は残る訳です。1分待つだけでも洗い流される量はかなり減ります。5分待っているうちに別のことを始めて忘れてしまうぐらいなら、1分間隔ないし立て続けにさしてしまったほうがましです。

ただ、手術の直後などは目薬をきちんとさすことが重要なので、手術後2週間くらいまでは5分間隔を守るべきです。忘れやすい方はキッチンタイマーを使うとよいですよ。

目薬は冷蔵庫?室温?

目薬は冷蔵庫に入れておいたほうがよいかどうかもよく聞かれる質問です。

室温保存(1~30℃)と冷所保存(1~15℃)がありますが、実はそれほどこだわる必要はなく、実際の取り扱いは同じで構わないと思っています。

まず、冷所保存の目薬でも、室温のまま持ち歩いて普通ほとんど問題ありません。冷所保存の目薬は温度が高いほど分解しやすくだんだん濃度が低くなるというだけです。変質して害になるようなことはありません。1~2週間程度の旅行で冷蔵庫に入れずに持ち歩いても問題ありません。もちろん冷蔵庫が使える時は使って下さい。

逆に、室温保存の目薬でも、封を開けたら冷蔵庫に入れておくことをお勧めします。使い始めるとまつげに触れて細菌に汚染されることが多いからです。防腐剤は入っているのですが濃度が低いので細菌は生き残ります。使い始めた目薬を30日後に検査したら半数から細菌が検出されたというデータがあります。

私は矛盾したことを言っている訳ではありません。水やお茶なら室温でも何日も保ちますが、冷蔵庫に入れたほうがやっぱり長持ちしますよね。同じことです。

冷蔵庫に入れておく場合、凍らせないように注意して下さい。凍らせると変質してしまいます。冷気の吹き出し口は凍りやすくて危険です。ドアポケットが無難です。

就寝前に目薬をさしてよいか

60歳以上の方は「寝る前に目薬をさしてはいけない」と教育されました。昔は硫酸亜鉛という成分を含んだ目薬が多かったせいです。

現在、硫酸亜鉛はほとんど使われていません。

医師から特に指示がない限り、就寝前に目薬をさしても差しつかえありません。むしろ、寝ている時間は長いので、1日4回以上さす目薬なら最後の1回は寝る前にさすのが普通です。

目薬がしみる時さしてよいか

目薬にはしみるものとあまりしみないものがあります。完全に中性ならしみないのですが、薬を溶かす都合で少し酸性になっていたりアルカリ性になっていたりします。これが目薬がしみる主な原因です。しみても害はないので、我慢できる範囲ならさしておいて下さい。

角膜にキズがあると特にしみます。今までしみなかった目薬が急にしみるようになったときは、角膜のキズが疑われます。目薬の副作用の場合もあるので、受診時に御相談ください。

コンタクトの上から点眼は?

コンタクト装用時、ハードなら点眼してよいがソフトは点眼してはいけない、とされています。(実は違う主張の医師もいて議論があります)

ソフトの上に点眼すると、一度コンタクトが目薬を吸って、少しずつ放出します。これはむしろ目薬の効き方としては望ましい形です。ただ、点眼を中止しても放出し続けるのは困ります。

最大の問題は、目薬に含まれる防腐剤をソフトが吸い、防腐剤が常に角膜に接触して角膜障害をおこすことです。防腐剤を含まない目薬ならソフト装用時の点眼を許可することもあります。

ソフトでも1日使い捨てなら上から点眼することを許可しています。コンタクトが目薬を吸ってもその日のうちに捨ててしまえば問題ありません。2週間タイプの場合は上から点眼するのは避けたほうが無難です。

強度近視や不同視など、コンタクトなしでは生活に支障が出る方もいます。そういう時はソフトの上から点眼するのもやむを得ないでしょう。

ハードは目薬を吸わないので、上から点眼しても構わないと思います。コンタクトが劣化する危険があると主張する医師もいますが少数派です。私自身はずっとハードの上から点眼することを許可してきました。それで臨床上問題を感じたことはありません。

点眼回数

点眼回数は、原則としては処方時の指示を守っていただきたいと思います。たいていの方には回数を守っていただけるのですが、中にはほとんど指示など無視して適当にさしている患者さんもいらっしゃいます。

点眼回数を正確に守る必要のある目薬の代表は、緑内障治療用の眼圧を下げる目薬です。キサラタン・トラバタンズ・タプロス・ルミガン・リズモン・ミケラン・エイゾプトなどです。きちんとささないと予定通り眼圧が下がりませんし、逆に回数を増やしても副作用ばかり強くなります。

ステロイド(副腎皮質ホルモン)の目薬も回数を守る必要があります。リンデロン・ビジュアリン・オドメールなどです。強いステロイドは効果も強いが副作用も強いので、効き方によって目薬の種類や点眼回数を加減する必要があります。回数を勝手に変更すると医師が判断を誤ります。

抗菌剤・抗ウイルス剤の目薬も点眼回数を守りましょう。良くなったからと勝手にやめるとぶり返し、今度は耐性化してしまって薬が効かなくなることがあります。

手術直後は、どの目薬も点眼回数を正確に守らなければなりません。

逆に、角膜保護剤や眼精疲労の目薬は、あまり回数を気にする必要はありません。むしろ、ドライアイでは目薬を頻回にさす必要があります。指示された回数は最低ラインと考えておけばよいでしょう。

2009.12