川本眼科だより 197眼のグッズ採点表 2016年6月30日
眼に効く、眼の健康に役立つ、という商品がたくさん売られています。宣伝文句を読むとどれも魅力的に見えます。
こういうグッズは広告通りの効果を発揮するのでしょうか? 信用できるのでしょうか?
実は、客観的に効果のあるなしを検証することは時間も手間暇もかかり、ほとんど不可能です。ただ、眼科医なりの知識と経験と勘がありますから、一般の人よりは正しい判断がしやすい立場にあります。
今回は、私の独断と偏見に基づいて、各種の眼のグッズを採点してみました。
加齢黄斑変性症に効くサプリ△
オキュバイトというサプリメントは、きちんと臨床試験をして有効性を証明し、学会にも発表、論文も出しました。ですからこのサプリは信用してよいと思います。(ちなみにサプリで臨床試験を実施することは普通なく、稀有な1例です)
オキュバイトを真似して各社が似たようなサプリを出しています。参天製薬のサンテルタックス、わかさ製薬のルテインプロ、などです。これらのサプリは、真似をしたと言ってもオリジナルと完全に同一成分ではないですし、きちんと臨床試験をして有効性を証明したわけでもありません。でも、似たような成分が含まれているのは事実なので、オキュバイトが効くなら、これらの後発サプリもそれなりに効くでしょう、たぶん。
効くと言っても、何年も根気よく使い続ければ加齢黄斑変性症の発症率が多少低下するという程度です。劇的な効果はありません。それでも何かサプリを使いたいならこれでしょう。
その他の眼に効くサプリ ×
アントシアニン(ブルーベリーの有効成分)、ルテイン、アスタキサンチンなどは、眼に効果があると主張するサプリの定番です。
それぞれに、若干の医学的報告は存在します。
例えば、アントシアニン(ブルーベリー)は抗酸化作用があること、ロドプシンの再合成を助けるので暗順応を早めることが報告されています。
しかし、そこから先に飛躍があり、確認された効果ではとても説明がつかないような眼の様々な病気に効くと宣伝されています。ホームページや広告での説明を読んでも全く納得できません。体験談も相当に怪しく、信用できません。
ルテインは加齢黄斑変性症にはそれなりの効果があると確認されました。でも、それ以外の病気に効くかどうかの証明は存在しません。老眼に効くとする広告を見ましたが、私は信じません。
大半のサプリはお勧めできない代物です。薬の認可・効能追加・再評価等にはあんなに厳しい厚労省が、サプリになると大甘でトンデモ広告を許しているのは、おかしな話です。一般人は薬とサプリの区別がついていないのですから、サプリにも薬に準じた規制が必要です。
ピンホールメガネ ×
ピンホールメガネは単体でも売っていますが、視力トレーニングを謳う本におまけとして付いてくるのをよく見かけます。
ピンホールメガネを使えば、カメラの絞りを絞ったような効果が得られ、その時だけはよく見えます。視力測定の際にも利用することがあります。でも、長期的に屈折を変化させるような効果はありません。つまり「視力回復」はピンホールメガネをかけたときだけで、外せば元の木阿弥です。
私はこれはほとんど詐欺に近いと思っています。ステルスマーケティングと言って、雇われたサクラがネットで高評価のレビューを書いている節があります。お気をつけ下さい。
ブルーライト軽減フィルター△
LED照明、LEDディスプレイにはブルーライト(青色光)が多く含まれています。そのため、LEDが普及するにつれ、健康に与える影響が懸念されるようになりました。
ブルーライト(青色光)は体内時計に影響することが判明しています。昼は青色光を浴び、夜は青色光をできる限り減らすことにより、自然な睡眠リズムを保ちやすくなります。つまり、青色光が常に悪というわけではなく、夜は避けたほうが良いということになります。
ブルーライト軽減フィルターは青色光の量を減らします。日中外が明るいときは外しておき、夜暗くなったら取り付けるのが理にかなった使い方だと思います。面倒くさいことが嫌いな人には向きません。私は全く使っていません。
また、青色光は赤色光に比べて散乱されやすい性質を持つことからピントが合わせづらくなって目が疲れるのではないかという仮説も提唱されています。これはあくまでも仮説に過ぎず、明確なエビデンスはないと考えています。
加齢黄斑変性症への影響については紫外線のほうが圧倒的に大きく、青色光はほとんど心配する必要はないと思います。
ブルーライト対策グッズを売ろうとして、いたずらに不安をあおる広告やホームページが多いので、だまされないように注意しましょう。役立つ医療情報の顔をして、実は商品の売り込みのことがほとんどです。賢い消費者になって、だまされないようにしましょう。
保湿メガネ △
ドライアイの人のために、メガネの両サイドにタンクがついていて、そこにスポイトで水を入れることで目の表面の乾燥を防ぐというメガネが売られています。’JINS Moisture’
慶応の坪田教授が指導してできた製品で、ご自分でも使っていらっしゃいます。当然それなりの効果はあるわけですが、問題もあるようです。
タンクは小さいので水の補充を頻繁にしなければなりません。さらに、タンクの手入れが必要で、ズボラをしていると細菌やカビの温床になって悪臭がすることになりかねません。仕方ないこととはいえ相当に面倒です。
それだけの苦労をすることに見合う効果が得られれば良いのですが、一般的な意見は「少し乾き方がましになった気がする」程度のようです。
そんなわけで、患者さんに積極的にはお勧めしていません。上記の問題点を理解していれば、理屈には合っているので、使ってもよいと思います。
(2016.6)