川本眼科だより 198大量殺人多発に思う 2016年7月31日
テロのニュース、大量殺人のニュースを毎日のように目にします。それは眼科とは直接関係がなさそうですが、平和で安全な世の中を保つことは医療を含めてあらゆる「暮らし・生活」の基盤であることは間違いありません。
事件の報道に触れていろいろと思うことがあったので、この場を借りて述べさせていただきます。
銃規制
日本は殺人の少ない国です。最大の要因は銃を厳しく規制しているからだと思います。銃がほとんど野放しになっている米国では殺人の発生率は日本の10倍以上ですし、銃の乱射による大量殺人もたびたび起こっています。
米国には銃規制に反対する圧力団体があって政治家に盛んにロビー活動を行うので、銃規制の必要性はずいぶん前から訴えられているにもかかわらず成功していません。いったん武器産業ができあがるとその既得権を奪うような政策には死にものぐるいの反撃が待っているのですね。米国の例は他山の石として教訓的です。
薬物規制
アフリカの内戦が続いている国では、少年が拉致され兵士に仕立て上げられるそうです。その際に人を殺しても平気になるように薬物が使われるそうです。良心や罪悪案や恐怖などを薬物で麻痺させてしまう訳ですね。
最近起きた障害者施設の大量殺人でも犯人は危ないハーブや大麻の常習者だったと報道されています。薬物を使うようになってから性格が変わり攻撃的になったという証言もありました。
こういう事例に鑑みると、やはり薬物は厳しく取り締まったほうが良さそうです。大麻くらいなら依存性が少なくてタバコよりも害が少ないと主張する向きもありますが、米国ではマリファナに手を出した若者がだんだん強い刺激を求めて他の薬物に染まっていく状況も報告されており、私は禁止し続けるべきだと思います。
いったん薬物を扱う闇の組織ができあがると、取り締まりが難しい厄介な反社会的存在になることは諸外国の例が証明しています。
格差の少ない社会を
実は世界には米国より殺人が多発している国はたくさんあります。ホンジュラス、ベネズエラ、ジャマイカ、南アフリカなどは米国の10倍殺人が起きています。つまり日本の100倍です。今度オリンピックが開催されるブラジルでも90倍の殺人が起こっています。
殺人事件が多い国に共通するのは貧困層が多いことです。生きていくことが精一杯なのに道徳を説いても仕方がないわけで、貧困層では社会への不満や敵意も鬱積していますし、犯罪が増え、治安が悪化する結果となります。
ですから、私は米国型の少数の者に冨が集中する社会は良くないと思っています。冨を分配して中間層を厚くすることが社会の安定には大切です。日本が世界で最も治安が良い国の1つなのは格差が少ないことが大きいと思います。
米国式の成果主義が幅をきかせ、非正規雇用が増え、以前より経済的格差は広がりました。そのことが治安にも影響を与えています。
移民の受け入れは慎重に
日本は人口減少社会を迎えています。労働力不足を補うために移民をもっと大幅に受け入れようと経済界で主張されています。
私は「低賃金の労働者」を移民として受け入れることには反対です。短期的には経済効果はあるでしょうが、将来に禍根を残します。
移民は最初は低賃金を受け入れ、日本人が嫌がる仕事を引き受ける便利な存在として重宝されるでしょう。でも、次第にそういう地位には甘んじなくなって待遇改善を要求し始めます。特に日本で生まれ育った二世たちは日本人と同じ権利を主張するでしょう。それがかなえられない場合は差別として激しく抵抗するでしょう。いずれ賃金コストは上昇すること必定です。逆に低賃金のまま貧困なら犯罪が増える恐れもあります。
しかも、移民が社会に同化してくれるかどうかわかりません。異質な文化を維持したままの場合日本の地域社会と軋轢を生じます。今ヨーロッパで起こっているような移民排斥とそれに対する抵抗運動につながる可能性大です。
そういう社会的コストを考えると、移民の受け入れには慎重なほうがよいでしょう。私は現在の移民制限政策を支持します。
労働力不足に対処するには
移民の受け入れ以外に労働力不足に対処する方法はたくさんあると思います。
保育施設を充実して育児負担を減らせば女性はもっと働いてくれるでしょう。子供がいる世帯を優遇して手当を支給したり教育費を支援するのも人口減少を食い止めるには必要です。高齢者向けの支出を子育て世代にもっと振り向けるべきです。
工場などで人間の手作業を減らしてロボットなどに代替するのが望ましい解決策です。24時間休まず働けるし、ミスなく作業してくれます。海外生産よりも高品質を追求できるし、これが日本の生き残る道だと信じるのですが。
死刑
EUでは死刑を廃止しました。でもそれで人々は納得しているのでしょうか?
花火大会中の遊歩道をトラックで走り、84人の人を轢き殺した犯人はその場で射殺されました。もし射殺されずに逮捕されていたら、死刑にはできなかった訳です。理不尽だと感じます。
何の罪もない人々を意図的に計画的に虐殺した場合は、やはり死刑にするのが社会的正義です。加害者にも人権はありますが、加害者によって被害者の人権は既に踏みにじられたわけで、相応の報いを受けなければ被害者が浮かばれないと私は思います。
そういうわけで、死刑廃止に私は反対です。
ネット社会~炎上・デマ・差別
インターネットが普及し、私たちの生活は便利になりました。その反面、ネットの負の側面も問題になっています。
ネット上では人は感情的になりがちです。ふだんは温厚な人が、ネット上では別人のように攻撃的になったりします。いわゆる「炎上」はある意味リンチみたいなもので、現実の生活ではそれなりにブレーキがかかるのにネットでは暴走してしまいます。
デマが拡散しやすいのも問題です。故意の虚言により人々の敵意をかき立てることもしばしば起こります。同様に差別的言動が何のチェックも受けずに広まります。悪意ある人がそういうネットの特性を利用して煽動することもしばしば起こります。
ネットで思想的に影響を受けて殺人を犯す人もいます。そういうことを考えると、虚言や差別的発言に対しては何らかの規制が必要かも知れません。
(2016.7)