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川本眼科だより

川本眼科だより 208予約制を考える 2017年5月31日

川本眼科で患者さんからの苦情が最も多いのは待ち時間の長さです。最近では2時間待ちも珍しくなくなってしまいました。混雑にはかなり波があり、以前はガラガラの時間帯も結構あったのですが、最近はいつも混雑している傾向にあります。

予約制は待ち時間問題への解決策として以前から検討してきました。ただ、確かに待ち時間が短くなる効果は期待できるのですが、一方で問題点もあって、今までは導入を見送ってきました。

今回は、みなさんと予約制の是非について考えていきたいと存じます。

待ち時間を短くする方法

患者さんはさっさと診てもらってさっさと帰りたいと思っていらっしゃいます。多少待つのは仕方ないとしても「1時間くらいで帰りたい」が各種のアンケート調査で示された患者さんの希望です。でも、現実はそうなっていません。

患者さんの受診が集中すれば混雑して待ち時間が長くなります。当然です。これを避ける方法はいくつか考えられます。

1つめは受診者数を減らすことです。実際に、大病院では開業医に紹介することで対処しています。川本眼科でも、コンタクトの新規処方を中止したり、受診間隔をあけたりしています。しかし、あまりに受診間隔をあけすぎて病気の悪化・進行への対応が遅れるようでは本末転倒です。

2つめは1人あたりの診療時間を短くすることです。所要時間が半分になれば2倍の患者さんを診ることができます。これも実際に努力しています。説明資料を用意して口頭での説明を短くしたり、一部の説明はスタッフに任せています。

説明は十分にして欲しい

しかし、診療時間はなかなか短くできません。なぜなら、最も時間がかかるのは「患者さんへの医師の説明」であり、同時に最も時間調節をしやすい部分なのですが、患者さんは十分な説明を望んでおり、「待ち時間が短くなるなら説明時間が削られても良い」とは思っていないのです。

説明は効率的に要点を押さえて行うにしても、大幅に省略することはかえって満足度を下げます。

予約制で来院を分散

3つめは患者さんの来院時間を分散させることで、そのための手段が予約制です。

診察に1人ぴったり5分かかるとすると3時間で36人診られます。朝1番に36人全員が同時に受付すると最後の人は3時間待ちになります。もし正確に5分間隔で分散して受付すれば全員が待ち時間ゼロになります。
 つまり、患者さんの絶対数は同じでも、偏りがなくなれば待ち時間は劇的に短くなります。これが分散の効果です。
 予約制には時間予約、時間帯予約、順番予約の3種類があります。いずれも来院を分散させることが目的ですが、それぞれ問題点があります。

時間予約制の問題点

時間予約制は来院時間を指定する方法です。単に予約制と言えばふつう時間予約制を指します。歯科では一般的です。患者さんにとっては予定が立てやすく、これが可能なら理想的です。

しかし、川本眼科で時間予約制を全面的に採用するのは無理です。患者数が多すぎ、しかも1人1人にかかる時間が長短まちまちで急に長引くこともあって、予定通りに進まないのです。つまり患者さんに約束した時間が守れません。予約時間から1時間以上も待たされれば誰でも怒ります。

要するにゆとりがないと実現できません。以前も検討しましたが、急患や初診患者の取扱いも難しく、結局断念しています。

時間帯予約制も評判が良くない

時間帯予約は”9:00~9:30″のように幅をもった時間帯に複数の方の予約を取る方法です。同じ時間帯の中では先着順に診ることになります。

1人にかかる時間が長短まちまちの場合に有効とされていますが、これも「次の時間帯までに全員の診察が終了している」が前提です。予約を入れすぎると結局前の時間帯の診療が次の時間帯に食い込み、やっぱり約束した時間が守れない結果となります。

例えば、中京病院の眼科は時間帯予約ですが、予約を適正数以上に入れざるを得ないため、本来の予約時間より1時間以上待たされることになり、「何のための予約制なの?」と批判されています。

高齢者にも優しい方法は

眼科は高齢者が圧倒的に多いことが特徴です。予約制の導入にあたっては、その点をよく検討する必要があります。小児科・耳鼻科では問題なくても、眼科では上手くいかないかも知れません。

高齢者は足が悪いので雨が降った日の受診は負担です。「雨でも無理してでも来い」は不親切というものです。雨の日には、高齢者は敬遠し、若い元気な人が「雨なら空いている」と狙って受診するのが理想です。でも、完全予約制だと直前に予約を変更することはほとんど不可能です。

予約の仕方も問題です。ネット予約(携帯電話・スマホ・パソコンでの予約)が現在の主流です。電話予約だと電話応対に追われて受付業務が滞ってしまいますし、一時に電話が集中して話し中でつながりにくくなる可能性大です。電話では聞き間違いも起こりそうです。しかし高齢者の中にはどうしてもネット予約ができない人もいます。

予約を取らずに直接来院された方への対処とも関わります。どの程度待てば診てもらえるのか、ルール作りが難題です。ネット予約できないからといってあまりお待たせしては申し訳ないですし、さりとて予約した方を優先しなければ真面目に予約した方からクレームが出そうです。

順番予約なら可能では?

順番予約は診察の順番を確保する方法で、いつ順番が回ってくるかはその日の診療状況によって違います。時間を指定している訳ではないので、1人あたりの診療時間がバラバラで予測が困難な場合に適しています。

順番予約は、携帯電話/スマホで行い、メールで「あと〇番で順番が来ます」とお知らせが届くのが現在主流です。患者さんはお知らせメールが届くまでの時間を有効利用することができます。院内での待ち時間を短くし、院内の混雑を緩和できるメリットがあります。

今何人が順番待ちになっているかもネット上で確認できるので、「今日は混んでいるから別の日にしよう」も可能です。結果的に受診者数が日によって大きくばらつくことがなくなり、平準化することが期待できます。

直接来院した方は一定時間待っていただいてから順番予約の途中に割り込ませればよく、時間予約に比べれば処理が容易です。

順番に遅刻した方も、直接来院の方と同様に、少し待てば診てもらえるようにすればよいでしょう。もちろん遅刻の程度に応じて待ち時間も変わらないと不公平だと思います。

順番予約なら川本眼科でも導入可能ではないかと現在検討中です。(1)ネット予約のみで当日受付とする(2)直接来院の方は予約した場合よりは多少待ち時間が長くなるように割り込ませる(3)視野検査やレーザー治療などは従来通り電話で時間予約、というやり方を考えております。

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