川本眼科だより 213眼科学会 最新事情 2017年10月31日
先月10月12日(木)~15日(日)の4日間、東京国際フォーラムで臨床眼科学会が開催されました。川本眼科でも金曜土曜を休診にして、医師2名と視能訓練士4名の総勢6名で参加してきました。
川本眼科だより116「医師と学会」 でも学会に関する話題を取り上げました。大筋は変わりませんが、8年経てば変化もあります。眼科学会事情と私の夢想をお話しいたしましょう。
日本眼科学会と臨床眼科学会
眼科の学会はたくさんあります。全国規模の学会だけでも20以上ありますし、地域ごとの学会もあります。
その中でもとりわけ巨大な学会が日本眼科学会と日本臨床眼科学会です。それぞれ日眼、臨眼と略して呼びます。日眼のほうは基礎や研究に関する話題が多く、臨眼のほうは臨床に直結した話題が多いという違いはありますが、どちらも眼科の中のあらゆる分野を扱っています。
学会のためとはいえ、頻繁に休診するのは患者さんの顰蹙を買います。ですから、休診にしてまで必ず参加する学会は、日眼と臨眼だけです。後は開催地や暦や代診などを総合的に勘案して決めています。本当は学会参加をもっと増やしたいのですが、現実は厳しいです。
日眼7千人、臨眼9千人
今年の日眼には約7千人、臨眼には約9千人が参加したそうです。すごい規模です。
先月参加した臨眼では14もの会場があって、複数の会場で同時に講演やシンポジウムが開かれていました。どれを聴講するか選ぶのも大変です。
医師のほかに視能訓練士も
眼科では、医師以外に視能訓練士という職種があります。視能訓練士は眼科検査を担当し、医師を支える重要な仕事です。視能訓練士は眼科医と同じように勉強して眼科の知識を身につける必要があるため、眼科の学会にも積極的に参加するようになりました。川本眼科でも、日眼・臨眼には参加するよう奨励し、費用も出しています。
昔は医師だけのものだった学会に、視能訓練士が加わることで、学会参加者は大幅に増えました。
混雑しすぎ
混雑しすぎて、移動も大変です。人の波をかき分けて進みます。東京駅くらい混んでいます。
うんざりするのは行列です。聴講予約も行列、会場に入るときも行列、昼飯を確保するにも行列。どこもかしこも長蛇の列です。行列の最後尾を探すのも大変で、最後尾が別の階ということも!
会場は入れ替え制なので、次のプログラムが同じ会場でも、そのまま座っていることは許されず、一度外に出て、また行列に並び直すのです!
ネット予約の導入
混雑や行列への対策として、数年前からネット予約が順次取り入れられました。これは私としては歓迎で、ずいぶん楽になったと感じました。
しかし、ネット予約が先着順だったために、予約受付開始日に出遅れた眼科医が続出し、人気のプログラムはどれも満員になってしまい、「全く予約ができなくて、せっかく学会に行ったのに面白そうな講演が全然聴けなかった」と、クレームが相当出たようです。
結局、ネット予約は縮小し、会場で行列して手に入れる当日券を増やし、さらに券なしでも並べば先着何人かは会場には入れるように変更されました。その結果、再び行列は増えました・・
元に戻しても解決になりません。ネット予約を先着順にしたことが問題で、一定期間は全員受け付けた上で抽選にすれば解決すると思います。
大人数を収容できる学会場
参加者が激増し、プログラムも盛りだくさんとなって、広い学会場が必要となりました。
臨眼の場合、千人規模の大人数を収容できる大きな会場から百人規模の会場まで大小12~15の講演会場が必要になります。そのほか眼科機械の展示場やリフレッシュコーナーなどのスペースも必要です。そういう施設はなかなかありません。
地方都市では、大ホール1つだけは数千人規模なのですが、いかんせん複数の大ホールが並んでいるような施設が存在しません。さらに、地方都市ではホテルも不足してしまいます。
そのため、最近では開催地が固定してしまい、東京(東京国際フォーラム)、京都(国立京都国際会館)、大阪(大阪国際会議場)のどれかで開催されるようになっています。
名古屋ですら開催できない
名古屋でさえ、臨眼の開催が困難になっています。以前は白鳥の名古屋国際会議場で開催されていました。2015年の臨眼は岐阜大主催で、主会場の名古屋国際会議場だけでは収容力が不足するため、副会場を金山のホテルグランコート名古屋にしました。しかし、会場を移動するのにシャトルバスを使わなければならず、不便だと不評でした。
2016年の臨眼は名市大の主催だったにもかかわらず、会場は国立京都国際会館でした。副会場がグランドプリンスホテル京都で、2つの会場を歩いて数分で移動できるのが利点でした。
私としては、名市大が地元名古屋で開催しないというのは誠に残念です。新幹線の名古屋飛ばしくらいの衝撃でした。
名古屋に日本一の学会場を
ちなみに大きな学会は、眼科に限らず会場の確保に苦労しています。例えば、日本医学会総会が毎年開催されますが、いつも分散開催です。1つの会場で開催できるように、学会の規模を抑えているケースもあります。
もし、名古屋に大小の会議場をたくさん供給できる日本で最大の学会場を作ることができれば、臨眼のような各科の巨大学会がやってきます。しかも定番の開催地になる可能性が高いのです。
その施設は学会だけでなく、東京国際フォーラムのように、コンサート会場等に多目的に利用することも可能です。参加者は、宿泊し、飲食し、買物や観光もします。波及効果は大です。
リニア新幹線ができた場合、イベントが東京でばかり開催されるなら名古屋は衰退します。逆に名古屋に日本一の施設があれば、イベントを招致して、東京から人を呼び寄せることができます。リニアは逆風にも追い風にもなりうるのです。
名古屋城の木造復元より、はるかに経済効果は高いと思うのですが・・ねえ河村さん。
会場案としては、白鳥の名古屋国際会議場に建物を増築して規模を拡大するのが現実的です。地下に作るも良し、高層ビルを建てるも良し。
実は名古屋には日本最大の国際会議場を作るのに絶好の土地がありました。ささしまライブ地区です。名古屋駅から近い最高のロケーションで、全国から人が集まってくる学会にはまさにぴったりでした。ここを私立大学のキャンパス用地として売却してしまうなんて、貴重な土地の使い方としては愚策でした。私は残念に思っています。
(2017.10)