川本眼科だより 240花粉症2020 2020年1月31日
またスギ花粉症の季節がやってきました。今年は例年より若干飛散が早いようで、既に1月からかゆみを訴える患者さんが散見されました。
花粉症については治療法はそれほど変わってはいませんが、それでもいくつか新しい話題はあります。
あらためて花粉症の治療法を考えてみましょう。
アレルギー免疫療法
実は院長もかなりひどいスギ花粉症でした。外出時にはゴーグルのような花粉症対策メガネをかけ、マスクをして、花粉が付着しないようなつるつるのコートを着るようにしていました。
今は花粉症の時期でもマスクもしないで平気です。ほとんど克服したと言ってよい状態です。これは「アレルギー免疫療法」を受けたからです。スギ花粉エキスを注射し続けて体が花粉に反応しなくなるように慣らす方法です。私の場合は自院の看護師に自分で指示して注射してもらいました。
今は注射でなく、舌の裏にスギ花粉エキスを置いて治療することができます。注射より楽ですね。
問題は全く症状がないのに何ヶ月も前から長期間治療を続けなければならないということです。仕事で忙しい方は通院し続けるのは困難だと思います。正直なところ万人向きとは言えませんね。でも、完治と言える状態に持って行けるのはこれだけだと思います。
なお、当院ではこの治療はしていません。ごめんなさい。当院の近所では、ごうクリニック、井上医院、すずき‐K耳鼻科などで受けられるようです。今年ではなく、来年の花粉症のために、ということになりますが。
鼻炎に対するレーザー治療
これは眼科ではなく耳鼻科で受ける治療です。特に鼻づまりに効果があるそうです。
花粉の飛散が始まる3~4週間前に治療することが推奨されています。既に時期を逃したかも知れませんが、ご希望の方は耳鼻科にご相談下さい。3割負担の方で1万円くらいかかるようです。
効果は1シーズン限りと考えておいたほうが良さそうです。また、多くの場合はレーザーだけでなく、薬も併用する必要があるようです。重症で薬だけではコントロールしきれない方に適していると考えられます。
抗アレルギー薬の目薬
花粉症のシーズンに突入してからは薬の出番です。目薬・点鼻薬・内服薬があります。それぞれ抗アレルギー薬とステロイドがあります。
抗アレルギー薬にも種類がいろいろあり、かつてはメディエーター遊離抑制薬(クロモグリク酸、トラニラスト、ペミロラスト等)が主流でしたが、今はヒスタミンH1受容体拮抗薬(エピナスチン、フェキソフェナジン、オロパタジン等)のほうが効果が強いとして取って代わりました。
当院では、目薬はH1受容体拮抗薬のアレジオン、アレジオンLX、パタノール、レボカバスチンのどれかを処方します。今年発売のアレジオンLXだけが1日2回点眼で、他は1日4回点眼です。当然2回のほうが便利ですが、薬価が高いのが欠点です。安いほうがよければ後発品のレボカバスチンをお勧めしています。
抗アレルギー薬の目薬は副作用の心配がほとんどなく安全ですが、即効性に欠け、しっかり効いてくるのに1週間くらいかかります。花粉情報に注意し、花粉が飛散する1週間以上前から使い始め、シーズン中は毎日使い続けることをお勧めします。雨の日などは花粉が少なく症状が出ませんが、そういう日でも忘れずにさし続けると、花粉の多い日に楽に過ごせるのです。
ステロイドの目薬
ステロイドの目薬には即効性があり、すぐ効いてくれます。特にかゆみに有効です。これはありがたいですね。抗アレルギー点眼薬だけでは効果が不十分なときはステロイドを併用します。
ただし、ステロイドを点眼すると眼圧が上がることがあります。その反応の仕方は人によって異なり、眼圧が上がりやすい人と上がりにくい人がいます。眼圧が上がりやすい人のことをステロイド・レスポンダーと呼びます。眼圧が上がっても自分ではわかりません。眼科で眼圧を測定する必要があります。眼圧が高い状態が長い間続けば緑内障になる心配があります。
効果の強いステロイドは眼圧が上がりやすいですし、たくさん使うほど、長期間使うほど眼圧は上がりやすいのです。
もちろん、無理してステロイドの使用を控える必要はありません。かゆいときはしっかり使って構いません。ただし、かゆくもないのにむやみに使ってはいけません。ステロイドの目薬だけ単独で使うのも間違っています。それではステロイドの使用量が増えてしまうからです。
ステロイドの目薬を使用中は眼圧を測りましょう。目薬を1本使い終わったところで眼圧を測ることをお勧めしています。多忙な場合は眼圧だけ測って次のステロイドを処方することもできます。
なお、ステロイドには角膜真菌症などの感染をおこしやすくなるという副作用もあります。
点鼻薬・内服薬
点鼻薬は本来耳鼻科の領域です。川本眼科では鼻の中まで観察していません。でも花粉症が確実な方には目薬を処方するついでに点鼻薬も処方することがあります。
内服薬はH1受容体拮抗薬のうち眠くなりにくい薬を処方します。実は「アレルギー性結膜炎」の病名では健康保険で処方できません。花粉症では鼻炎も合併しているから処方できるのです。ステロイドの内服は副作用が強いので使いません。
重症の花粉症にゾレア
最近の話題は抗IgEモノクローナル抗体の注射薬「ゾレア」です。もともと重症の喘息や慢性じんましんに使われていた薬ですが、昨年12月から重症の花粉症にも使えるようになりました。
よく効くようですがものすごく高価な注射薬で、体重や血液検査の結果によって投与量は変わりますが、試算では3割負担で自己負担が6万円かかるそうです(1シーズンで)。しかも「既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る」という縛りもつけられているので、たぶんほとんどの人にとっては無縁でしょう。川本眼科でも今のところ使うつもりはありません。
(2020.1)