川本眼科だより 259コロナ禍 トリビア 2021年8月31日
昨年7月に「コロナ下の眼科診療」と題して記事を書きました。その後1年以上経っても流行は収まらず、デルタ株が猛威を振るっています。
今回はコロナCOVID-19に関する雑多なお話です。
換気とパーティション
コロナウイルスは飛沫(ひまつ)またはエアロゾルを吸い込むことで感染します。口や鼻から吐き出される微小な水滴で、大きさにより飛沫とエアロゾルに分類されます。飛沫は比較的早く落下するのに、エアロゾルはいつまでも空気中を漂うなど挙動は多少異なりますが、同じようなものです。
飛沫等による感染を防ぐ決め手は換気だと私は思っています。アクリルパーティションやビニールで遮蔽する感染対策が普及していますが、一時的に飛沫等を遮蔽はするものの、換気を邪魔するので、逆効果になる可能性が高いのです。
窓を開けて換気する場合は、端にある窓とその反対側の窓を開放して風の通り道を作ってやる方法が最も換気効率が良いと言えます。もし途中にパーティションがあると風が遮られて換気効率は格段に落ちます。
冷暖房中は換気扇に頼ることになります。川本眼科の場合、換気扇を強にしておけば約15分で室内の空気が入れ替わり、飛沫等を室外に吸い出す能力としては十分です。ロスナイという熱交換型の換気扇なので、冷暖房の効率が極端に低下することもありません。
しかし、換気扇は各部屋に1つしか設置していないので、パーティションがあると空気の流れが邪魔され、飛沫等がいつまでも漂い続ける空間ができてしまいます。換気を考慮すると、むやみに大きいパーティションはダメです。
ワクチン接種してよいか
コロナワクチン接種はどんどん受けて下さい。接種できないような眼の病気はありません。自分の身を守るため、家族を守るため、社会を守るため、ワクチンを打ちましょう。
人口の7割がワクチン接種すればパンデミックは概ね収束するという推計がされています。
「ワクチン接種後に〇〇の症状が出たがこれはワクチンのせいではないか」という質問もよくいただきますが、眼に副反応が出ることはほとんどなく、大半は因果関係なしと考えられます。どうぞご安心下さい。
ワクチン反対論
インターネットではワクチンに対する不安を煽り、ワクチンに反対する言説が飛び交っています。コロナワクチンを打つと5Gの電波で操られるとか、人類を支配するための陰謀だとか、デマも多いです。とくに、ワクチン接種で不妊になるというデマは信じた人が多く、心配になって接種をやめた人も相当数いるようです。当院のスタッフも不安になって私に相談してきました。ネット上の情報を正しく取捨選択することは難しいです。
デマを信じて自分が接種をやめるだけなら不利益は自分に跳ね返るだけですが、最近名古屋市では、学校の先生が生徒にワクチン否定論を語って生徒が動揺したという事例が発生しています。これは悪影響が大きく看過できません。
接種に眼科医も看護師も動員
現在、医師会総動員でコロナワクチン接種にあたっています。何しろ、日本国民(および在留外国人)の大半にワクチン接種をしようという大事業ですから大変です。
眼科医の私も動員され、南区の接種会場に既に4回赴きました。これからも何回か動員されるようです。私が出務の際には当院の看護師も交代で接種介助にあたってくれました。
患者さんは戻ってきている
コロナの流行で昨年の一時期には受診患者さんが激減し、定期的に受診して目薬を続けなければならないにもかかわらず、コロナ感染を恐れて受診しなくなった方がかなりいらっしゃいました。さすがに今はそういうことはなくなってきました。もちろんまだ元通りとはいきませんが、7~8割まで戻ってきています。
眼科通院による感染リスクは非常に低いことが理解されたのだと思います。眼科クリニックにコロナの患者さんが受診することはまずなく、仮に無症状の感染者が受診した場合も、診察時にもいつもマスクを着用し、大声を出すことも普通ないので、感染の可能性は低いと言えます。
また、眼科を受診される方は60歳以上が多いわけですが、その年代の方々はたいていワクチン接種を済まされたことも大きいでしょう。
手術はずっと続けています
白内障日帰り手術は緊急事態宣言が出された中でもずっと続けてきました。今のところ眼科手術が感染機会になったケースはありません。さらに、手術を受ける年齢層の方は現在ほとんどワクチン接種を済ませていらっしゃいますし、医療関係者もワクチン接種を終えています。1年前よりさらに安全になっているのです。ごく普通に手術は受けられると考えていただいて結構です。
もちろん、白内障手術は特殊なケースを除いて緊急性はなく、待つことが可能です。不安ならば無理に手術する必要はありません。
ただ、まだコロナの流行は続きそうです。既に視力が低下し生活に支障が出ているのに、コロナを恐れて延期するのは得策ではありません。早く手術して早く良く見えるようにするほうが理性的で正しい判断だと思います。
ただ、大きな病院に入院する場合は多少影響があるかも知れません。今はコロナの患者さん向けに病床を確保しなければならず、急がない手術は待たされる可能性がありますから。
対策しながら日常を取り戻す
コロナCOVID-19の流行はまだ続きます。もちろんコロナに対する警戒を怠ってはいけません。何しろ死ぬこともあり得る病気です。
しかし、コロナについての知識も増えました。感染防止のために注意すべきポイントも分かってきました。流行初期とは異なり、今は何も生活のすべてを犠牲にする必要はないと思います。
小売店はお客さんがいなければつぶれてしまいます。ホテルは宿泊客がいなければつぶれてしまいます。また。完全な休業補償など不可能です。国や県や専門家等の指導に従ってきちんと対策を取った上で営業することは許されることですし、お客さんのほうも感染防御にきちんと協力しているなら何ら非難される筋合いはありません。
これからは、対策しながら日常を取り戻すことを考えていくべきでしょう。
(2021.8)