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川本眼科だより

川本眼科だより 263目に良い生活習慣 2021年12月31日

目の病気の治療というと目薬や注射や手術ということになります。残念ながら生活習慣を変えるだけで治ることは普通ありません。ただ、もちろん病気を悪化させないように生活習慣に気をつかうことは大切だと思います。新年にあたり、みなさんに努力していただきたいと私が考えている点をまとめてみました。

禁煙は目にも大事

がん予防や呼吸器疾患予防のために禁煙が大事だということはご存じだと思います。肩身が狭い愛煙家の方には追い打ちをかけるようで申し訳ありませんが目のためにも禁煙して下さい。

タバコを吸う方では加齢黄斑変性の発症リスクは3倍以上になり、進行もしやすくなります。しかも本数が多くなるほどリスクは高くなります。

タバコは白内障も起こしやすくします。目に良いことは何もないので直ちに禁煙を!

お酒は酔わない程度に

タバコの害は明らかですが、お酒はどうでしょうか?「酒は百薬の長」みたいな言い方もあって、プラスの効用を説く人も多いようです。

お酒も量が多いと視神経に悪影響があることは確認されています。適量なら構わないとされてきましたが、適量とはどのくらいなのでしょうか?厚労省のガイドラインでは1日純アルコール20gとなっています。ビール中びん1本、日本酒1合、缶チューハイ1本、ウイスキーダブル1杯に相当します。これでは酔えないと思いますが、結局、健康第一に考えればビックリするくらいの少量しか飲酒できないということです。

紫外線対策

太陽光を浴びることは子供の近視進行予防に有効だと証明されています。ですから子供が外で遊ぶことは推奨されます。

大人にも太陽光は体内時計の日周リズムを維持することに重要で、自律神経や睡眠と深く関わっていますから、家の中に閉じこもってばかりいることは決してお勧めできません。

一方で紫外線は白内障、加齢黄斑変性、翼状片を引き起こします。紫外線対策は予防のために重要です。もう1つの主因である加齢はコントロールできませんが、紫外線対策は手軽に可能であり、お金も大してかかりません。

紫外線対策の主役はサングラスです。紫外線は99%カットし、可視光線はあまりカットしないレンズ(見た目が濃くないもの)がお勧めです。

サングラスをしても横の隙間から紫外線が入ります。帽子や日傘を併用すれば万全です。

食事は偏らないことが大事

患者さんから「目に良い食べ物は何か」と質問されることが多いのですが、特定の食べ物だけをたくさん食べても効果は期待できません。食事は必要な栄養成分を満遍なく摂取することが大事で、もし不足している栄養素があれば目に悪いとお考え下さい。タンパク質が不足しているならタンパク質を、ビタミンAが不足しているならビタミンAを、オメガ脂肪酸が不足しているならオメガ脂肪酸を摂るべきで、万人に共通する推奨食品などあるはずがないのです。

ただ、一般的に不足しやすい栄養素というものはあると思います。伝統的な和食は比較的バランスが良いのですが、野菜が不足しがちです。特に緑黄色野菜はベータカロチンを含み、体の中でビタミンAになりますから、目のためにも積極的に食べましょう。牛乳は、統計上日本人で一番不足しているカルシウムが摂れますし、タンパク源にもなるので良さそうです。ただ、それだけではダメであくまでも大事なのは偏らないことです。

運動は目にも良さそうだ

運動は、内科疾患や整形外科疾患の多くで決定的に重要なのですが、目の病気ではそれほど明確ではありません。白内障や緑内障にはあまり関係がなさそうです。

しかし、全身と関係がある目の病気もあります。例えば糖尿病網膜症です。糖尿病のコントロールが悪いと発症するわけですが、当然運動は治療上不可欠です。また、高血圧や血栓が危険因子となる目の病気もあり、運動は関係してきます。

また、運動すると様々な生理活性物質が分泌されることが解明されつつあり、その一部は目にも関係します。運動は酸化ストレスから目を守る働きがあると示唆する研究もあります。

「運動は目にも良い」と言ってしまってよいと私は判断しています。

スマホやパソコンはほどほどに

たぶん「分かっちゃいるけどやめられない」のがスマホではないでしょうか? 実際、スマホは便利です。1台で多くの役目をこなしてくれる優れものですし、友人・家族とつながる欠かせないコミュニケーションツールにもなっています。

便利なるが故に1日中スマホを眺めていることになりがちです。そうすると目への負担も半端ではありません。眼精疲労・調節障害・ドライアイなどの原因になります。若い人で長時間使用すると近視化・急性内斜視などを起こします。(それぞれの病気の詳しい説明は省きます)

パソコンでは画面との距離がスマホよりは遠いのでまだましですが、仕事のため長時間使わざるを得ず、不調を感じても休めない点で深刻です。厚労省のガイドライン(昨年12月改定)では1時間作業したら15分休憩することになっていますが、実際にはほとんど守られていません。

もはやスマホやパソコンのない時代に戻ることは不可能ですが、無理をせず、途中休憩を入れたり目薬をさしたりしながらながら上手に付き合っていくことが必要だと思います。

照明と目と睡眠

照明も広い意味で生活習慣です。脳の松果体は目を通して光刺激による制御を受けます。松果体はメラトニンというホルモンを分泌し、メラトニンは睡眠を誘導します。

最近の研究で、青い光(ブルーライト)は松果体からのメラトニン分泌を抑制することが発見されました。LED照明やスマホ・パソコンのバックライトには青い光が多く含まれているため、睡眠障害の原因になっている可能性があります。

夜就寝前の数時間はスマホ・パソコンを極力使わず、照明は暖色系で暗めにしておくと、自然の眠りを妨げないと思います。就寝直前はテレビもダメです。ラジオか静かな音楽にして下さい。

そして十分に睡眠を取ることは目にも良い影響があることは間違いありません。

(2021.12)