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川本眼科だより

川本眼科だより 266緑内障の手術 2022年3月31日

緑内障にも手術をすることがあります。ただ、白内障では手術がメインの治療法になりますが、緑内障では目薬が一般的な治療で、目薬だけでは進行してしまう場合に手術を考えます。

今回はどんな時に手術を考えるのか、どんな手術法があるのかをご説明します。

当院では緑内障手術をしていません。手術が必要な場合は専門の先生にご紹介いたします。

緑内障の治療法は眼圧下降

緑内障の治療法は「眼圧を下げること」です。他に血流を改善させる方法なども試みられていますが、眼科医すべてが有効と認める確立した治療は今も「眼圧を下げる」だけなのです。

眼圧を下げる方法として目薬・レーザー・手術があります。

目薬で始めるのが普通です。最初は1種類だけ使い、眼圧下降が不十分なら2種類、3種類と増やしていきます。ただ、眼圧は最初の目薬が最も下がりやすく、種類を増やしてもだんだん下がりにくくなり、いつか頭打ちになってしまいます。目薬の種類を目一杯増やしても緑内障が進行してしまう場合には、手術を考えることになります。

レーザー(SLT) はだいたい目薬1種類ぶんの効き目です。毎日点眼しなくてもよいのは楽ですが、保険でも自己負担が1~3万円かかり、「7割で有効、3割で無効」という治療成績なので、出番は限られます。 ※川本眼科だより232「SLT」

手術もまた眼圧を下げる手段の1つで、眼圧をさらに下げることで緑内障の進行を食い止めます。残念ながら、手術しても緑内障で欠けた視野が元に戻ることはありません。

緑内障手術を考えるとき

緑内障は視野がだんだん欠けていく病気です。進行して中心まで視野が欠けると視力も低下し、最終的には失明もありえます。

一般論としては眼圧が低いほど進行しにくいのですが、どこまで眼圧を下げる必要があるかは、その人その人で違います。かなり眼圧が高くても進行しない人もいれば、低めの眼圧でも進行してしまう人もいます。そのため定期的に視野を調べて悪化していかないか確認しています。

目薬・レーザーだけで眼圧が十分下がり、視野が悪化していなければ手術はしません。手術にはリスクがあるので第一選択にはなりません。

目薬を何種類も使っているのに視野の悪化が止まらなければ手術を検討します。さらに目薬を増やしても眼圧を更に下げることは難しく、手をこまねいているうちに進行してしまえば元に戻すことはできません。

目薬が副作用のため使えなくなり、治療不十分になってしまったときも手術を検討します。他の目薬に変更してみても元の目薬ほど効かないことが多く、そもそも代替品がないこともあります。特にアレルギーが複数の目薬に起こってしまうと深刻で、手術に踏み切るしかないでしょう。

手術を勧められたら

緑内障の手術をお勧めしてもなかなか同意していただけません。「手術は将来視野が悪化するのを防ぐことが目的で、手術しても現在の視野が良くなるわけではありません」という説明では積極的になれないのはわかります。合併症の説明を聞けば心配になるでしょう。それに「自分だけは大丈夫」と思いたいのは人間の常です。

結局、「このまま様子をみる」という選択をされる方が多いのですが、それは危険です。現時点で手術のリスクを取らない代わりに徐々に悪化していく可能性が高いのです。悪化した視野は元には戻せません。そうなっても構わないという覚悟がありますか?

MIGSと濾過(ろか)手術

緑内障の手術はたくさんありますが、一般の方向けに単純化するとMIGS濾過手術に分類できます。

MIGSは「低侵襲緑内障手術」の英語の略です。目の中にある房水の流出路を広げて流れやすくするという手術法で、いくつもの種類がありますが、詳細は省きます。共通するのは、小切開で安全性が高く、早く回復することが期待できるという点です。ただ、眼圧を大きく下げることはできず、15~16mmHgになれば成功です。そのため、術後も緑内障の目薬を中止することはできないのが普通です。

濾過手術は房水を本来の流出路ではなく、別の場所に流す方法で、房水のバイパスを作ることになります。大きく眼圧を下げることが可能で、時には10mmHg以下になることもあります。緑内障の目薬をすべて中止できることもあります。その代わりに目に対する影響は大きく、感染など合併症も結構あります。ハイリスク、ハイリターンの手術と言えます。

医師が病状を検討した上で特定の術式を勧めることも多いと思いますが、MIGSと濾過手術のどちらにするか選ぶように言われることもあります。どうしても安全なMIGSを選びがちですが、MIGSを選んだ場合には、眼圧が十分下がらず、結局後日あらためて濾過手術をすることになる可能性も念頭に置いておきましょう。

白内障手術時のMIGS

緑内障患者さんも加齢とともに白内障を発症し、いずれ白内障手術を受けることになります。

緑内障でも普通に白内障手術が可能ですが、その際に眼内ドレーンという器具を留置する手術があります。MIGSの1種です。

緑内障の目薬を減らすことができるかも知れません。ただ、通常の白内障手術なら当院に通院すれば良いのですが、この手術を受けた場合は手術した眼科へも通院が必要です。

手術をどこで受けるか

当院では緑内障手術をしていないので、手術を考える場合は、ふつう中京病院か中京眼科に紹介しています。名前が紛らわしくて申し訳ありませんが、中京病院は大きな総合病院で、中京眼科は神宮前にある眼科クリニックです。

紹介をしてもその日に手術が決まるわけではなく、通常は検査を受け、何回か通って手術するかどうか判断することになります。結局手術せずに当院に戻られる患者さんもいらっしゃいます。

それ以外の眼科に紹介することもできますが、密接な連携を取っている訳ではないので、紹介先に完全にお任せする形になり、術後も紹介先に通院していただく形となります。ある程度安定した時点で紹介先の医師と相談して途中で当院に戻られるケースはあります。

(2022.3)