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川本眼科だより

川本眼科だより 277目薬をいつさすか 2023年2月28日

今回は基本中の基本、目薬のさし方のお話です。

目薬はいつさしたらよいのか、とご質問をいただくことは多くて、みなさん疑問をお持ちだとわかります。医師や看護師から受ける説明が食い違うというお声もいただきます。

寝る前に目薬をさしてよいのか悩んでいる方もいらっしゃいます。知人に「目薬は寝る前にさしてはいけない」と言われて誰を信じて良いのかわからなくなった人も・・

今回はその辺の疑問にお答えします。

時間指定は必要か

入院中は目薬をいつさすかは時間で指定されます。「7時、11時、15時、19時」と 目薬タイムが決まっていて、それぞれの時間に何の目薬をさすか一覧表を渡されたりします。退院後も同じようにさすよう指導されることもあります。

こんなに厳密に時間を決めなければならないものでしょうか? 時間通りにさせないと悩む方もいらっしゃるのですが、実は、結構いい加減でも大丈夫です。入院中は患者さんがきちんと目薬をさしたか確認する必要があるので、便宜上時間を決めているだけです。

1日にさす回数さえ守っていれば、時間が大幅にずれたとしても心配ありません。さす間隔が短くなっても大丈夫です。外出中にさすのが難しいのなら、在宅中にさして下さい。1日4回なら、朝外出前2回、夕方帰宅後2回でも、それほど問題ありません。

もちろんある程度ばらけたほうが良いとは思います。点眼後徐々に薬の濃度は下がっていくからです。朝のうちに4回さして後は全くささないのでは極端過ぎます。

1日4回以上の目薬は適当に

1日4回と指定される目薬には、抗菌剤の目薬、アレルギーの目薬、ドライアイの目薬などがあります。1日4回以上さす目薬は、効果の持続時間が比較的短いので1~2回では効果不十分です。

点眼回数だけ守れば、いつさすかは適当で大丈夫です。一般的にさす回数が多いぶんにはさほど問題なく、1日5回6回になっても大丈夫です。もしも何回さしたかわからなくなったら、余分にさしておくのが無難です。

目薬の場合、食事との関係もありません。たださし忘れを減らすために「食後3回と寝る前」などと提案しているだけです。自分の好きなように変更して構いません。

寝る前に点眼してもよいのか

「寝る前には目薬をさしてはいけない」という話は広く流布していて、よくある質問の1つです。

結論から言えば、寝る前にさして構いません。むしろ、寝ている時間は長いので、寝る前に1回さすよう指導することが多いと思います。

昔は硫酸亜鉛という成分を含む目薬があり、寝る前にさすと角膜・結膜に悪影響が出るとされていました。しかし、現在硫酸亜鉛はほとんど使われていないので、気にしなくてよいのです。

ただ子どもの頃に教えられたことはしっかり記憶に残るので、今でも「寝る前の目薬はダメ」と信じている人が多いのです。さらに口コミを通じて間違った情報が何度も拡散するので、なかなか風評が消えないわけです。

1日2回の目薬は朝・晩

1日2回の目薬は、薬剤の有効濃度が12時間以上持続する目薬です。朝・晩にさして下さい。 厳密に時間を決める必要はなく、だいたいで大丈夫。朝は起床時でも出勤後でもOK。晩は午後5時でも就寝前でもOKです。さすがに朝・昼にさして夜ささないのでは偏りすぎです。薬の濃度が低くなりすぎる時間帯ができてしまいます。

1日1回の目薬

1日1回の目薬は、薬剤の有効濃度が24時間以上持続する目薬です。長時間効くのでいつさしてもそれなりに効果は得られますが、効果を最大限発揮させ、副作用を避けるために、さす時間帯が決められています。

充血する目薬は、夜点眼をお勧めしています。例えばラタノプロストやビマトプロスト等の緑内障薬はさして数時間後に充血のピークが来るので、夜寝ている間に充血をやり過ごすわけです。寝る直前にさすと朝まだ充血している恐れがありますから、少し早い時間がお勧めです。

もし充血が気にならないなら朝点眼でも構いません。1ヶ月もさし続けるとさほど充血しなくなるので、朝点眼に変更しても大丈夫です。

緑内障の目薬のカルテオロールやチモロールはベータ遮断薬といい、房水産生を抑えて眼圧を下げます。もともと1日2回点眼でしたが、現在は1日1回で済むように改良した製品が主流です。1回点眼のベータ遮断薬は朝点眼して下さい。房水産生は日中昼間に行われるからです。

配合点眼薬の場合

緑内障では複数の目薬を長期間さし続ける必要があります。その負担を軽減するために2種類の有効成分を混ぜた配合点眼薬が数年前から数多く登場してきました。

1日2回の目薬を混ぜた場合は当然1日2回させばよいので問題ありません。問題は朝1回さす目薬と夜1回さす目薬を混ぜた場合です。

ラタチモ(ラタノプロストとチモロールを混ぜた目薬)を例に考えます。製薬会社は朝でも夜でも効果は変わらないと言っています。しかし、ラタノプロストは朝でも夜でも効果は大差なく、一方チモロールは朝さしたほうが効果が高い目薬です。ならば、ラタチモは朝点眼すべきだと私は考えます。ミケルナやトラチモも同じ理屈で朝点眼を推奨します。朝でも夜でもそれほど大きな違いはないでしょうが、私のこだわりです。

コンタクトと目薬

ハードコンタクトなら、上から目薬をさしても構いません。

ソフトコンタクトの場合、点眼可の目薬、点眼不可の目薬があります。絶対ダメということもありますが、「たぶん大きな問題は起きないけれど避けたほうが無難」というケースが多いです。目薬の必要性を勘案して医師が判断することになります。コンタクトを禁止することもあります。

コンタクトの上から点眼できないなら、装着前と外した後にさすことになります。点眼後5分もあければコンタクト装着OKと私は考えていますが、医師の指示があればそれに従って下さい。

ソフトの上から点眼すると、ソフトが目薬を吸収して少しずつ放出し、長時間効果が持続します。その目的でわざと上から点眼することもあります。

5分間隔でさす意味

目薬を複数点眼する場合、5分あけてさすように指示されます。これは正確には「5分以上」です。10分あけても1時間あけてもOKです。

理由は、立て続けにさすと先にさした目薬が後にさす目薬で半分ぐらい流されてしまってもったいないからです。混ざると害があるという意味ではありません。半分は残るので、ささないよりましです。「5分あけようとして2番目の目薬をさし忘れる」というのでは本末転倒です。

(2023.2)