川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 294レッドライト治療 2024年7月31日

小児の近視進行抑制に新しい方法が登場しました。赤色レーザー光を、1日2回、週5日、眼に照射するという治療法です。今までの方法よりも近視抑制効果が強力だと報告されています。
ただ、機器の使用料や自費の診療費を合計すると初年度27万円以上、その後も毎年10万円以上かかります。高額です。
また、網膜障害や視力低下をきたしたケースが報告されているので注意が必要です。
現在、当院では取り扱っていません。将来取り扱う可能性はありますが未定です。レッドライト治療を始めている施設を紹介することはできますので、ご相談下さい。

中国で発見

赤色光はもともと中国で弱視に対する治療として試みられていたそうです。その試みの過程で、赤色光に近視の進行抑制効果があることが偶然発見されたのです。
どうして効くかはよく分かっていなかったのですが、当初は中国で広がり、その後は世界各国で追試されて、今では確かに効果があると評価されています。

近視抑制効果は強力

しかも、今までの報告をまとめると、従来使われてきた方法よりも近視進行抑制効果が強力で、場合によっては近視が軽くなることさえあるというのです。
本当なら画期的です。従来、低濃度アトロピン、オルソケラトロジー、特殊設計のソフトコンタクトなどが使われてきましたが、将来レッドライト治療が取って代わる可能性があります。

日本では未承認の機器

日本で入手できるレッドライト治療用の機器はオーストラリア Eyerising Internationalの機械だけです。つまり、どの眼科でも同じ機器を使っていますから効果も同じです。日本では未承認ですので、個々の医師の責任で使用することになります。
この機器は顕微鏡のような形の接眼部に 650nmの赤色ダイオードレーザーを出すので、そこをのぞき込んで治療します。1回3分、1日2回、週に5回治療し、2日間休みます。
回数が多く、通院で治療するのはほぼ不可能ですので、有料で貸与してもらい、自宅で治療することになります。

高額な費用

機器の利用料は Eyerising社に支払います。月に 8,250円、1年先払いで1割引、2年先払いで2割引ですが、先払いするとたとえ治療を中断しても返金されません。
眼科の診療費も自費になります。治療が受けられるかどうか調べるだけで16,500円、治療開始後初年度は4回分の検査・診察費用が 165,000円、さらにその4回以外にこの治療に関連して受診したらそれも自費で別に費用がかかります。
従来の治療法に比べると相当高額です。そんなに複雑な機械には思えないので、他の会社が製造を始めて競争が始まれば、今よりずっと安くなるような気がします。

合併症や副作用は?

まぶしさだの長期に持続する残像だのが報告されていますが、深刻なものではなさそうです。
ただ、頻度は低いのですが、黄斑異常・視力低下をきたした症例が報告されています。もともと何か病気を持っていて悪影響が出たのだろうと推察されていますが、問題がある人を事前に発見するのは相当困難と思われます。治療がさらに普及すると副作用の報告が増えるかも知れません。

どのように仕組みで効くのか

実は赤色光がなぜ有効なのか、まだ解明されていません。一応、有力とされる説では「赤色光により眼底血流量が増えて脈絡膜が厚みを増し、その結果眼軸長の伸びが抑制される」とされます。
この説を解説し出すと専門的になりすぎますし、本当に正しいのか不明ですので省略します。仮説の証明には今後の実験や臨床試験が必要です。
一般の方の理解としては「赤色光で血流が増えるから効く」くらいでよいと思います。

川本眼科では当面見送り

レッドライト治療は可能性を秘めた治療法だと評価しています。将来、標準的な治療法になるかも知れません。
ただ、機器が未承認です。日本での臨床治験は実施されていないわけで、広く普及してから問題が発見される可能性もあります。費用も高すぎると感じます。
現在当院で行っている近視進行抑制の治療法はかなり効果が出ており、急いで飛びつく必要はないと判断し、当面取り扱いを見送ることにいたしました。
今後、学会報告や論文で治療結果が報告されるはずで、評価が定まり、安全性も確認できたところで、あらためて導入を検討しようと思います。

名古屋アイクリニックに紹介します

レッドライト治療をすぐ始めたいとご希望の方には、名古屋アイクリニックをお勧めします。当院と密接に連携している施設で、白内障手術や近視矯正手術などでいつもお世話になっています。院長の中村先生は友人ですし、屈折矯正の専門家が揃っていて、信頼できます。
名古屋アイクリニックでは、レッドライト治療をはじめ子供の近視抑制について、自院のホームページで案内しています。医学的に正確な記述だと思いますので参考にして下さい。
https://nagoyaeyeclinic.or.jp/children/

【おまけ】 HPVキャッチアップ接種

HPVワクチン(子宮頚癌予防ワクチン)の積極的勧奨が再開されました。子宮頚癌は日本で毎年1万人の女性がかかり、3千人の女性が死亡する病気です。ワクチンのメリットは大きく、副反応のリスクをはるかに上回ると考えられます。
誕生日が1997~2008年の女性の中に接種を逃した方がいらっしゃるということで、その人たちに無料の接種機会が提供されています。(キャッチアップ接種)
公費で接種できるのはサーバリックス、ガーダシル、シルガード9の3種類です。今から受けるなら9価ワクチンのシルガード9がお得です。無料なのは2025年3月末までです。
接種は3回で、初回接種の2ヶ月後、6ヶ月後に2回目、3回目を打ちます。このスケジュールで全部無料にするには、今年の9月までに接種を始める必要があります。この期間を過ぎても有料で接種は受けられますが、1回2~3万円かかってしまいます。(医療機関により異なる)
 まだご存じない方が多いようなので、他科の問題ですが、この場を借りてお勧めしておきます。

 

(2024.7)