川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 22ロービジョン 2001年12月31日

失明したわけではないが視力が非常に低い方がいらっしゃいます。この場合、残存している視力をどのように活用していくかが問題になります。
 
今回はそのための道具を御紹介いたします。

ロービジョンと弱視の違い

ロービジョンとは、「失明はしていないが視力が非常に低い状態」を言います。矯正視力でだいたい0.02~0.3くらいを指しますが、それほどはっきりと線が引けるわけではありません。
 
似たような言葉に「弱視」があります。弱視は医学用語で、子供の時に視力の正常な発達が障害された場合に限定して使用される言葉です。弱視という言葉が特殊な意味を持っているために、一般的に矯正視力が低い状態を表す言葉が必要になり、英語のロービジョンという言葉が使われるようになったのです。

ロービジョン補助具

ふつうのメガネでは十分ものを見ることができない場合、補助具を使用することを考えます。
 
補助具には、ルーペ、単眼鏡、拡大読書器があります。パソコンを利用する方法もあります。

ルーペ

ロービジョンの補助具として一番使われるのはルーペです。虫眼鏡と言ったほうが通りがよいでしょうか。世間でよく見かけるルーペはたいてい2~3倍程度にしか拡大してくれないため、ロービジョンの補助具としては役に立ちません。ロービジョン用には5~20倍くらいの拡大率のルーペが必要になります。
 
しかし、拡大率が高くなると視野が狭くなるので、文字など見たいものが見える範囲で最低の倍率を選ぶのが便利です。当然、見たい対象によって必要な拡大率は異なるので、倍率の異なるルーペを何種類か用意する必要があります。この目的のために、レンズを2~3枚重ね合わせて倍率が変えられるようにしたルーペもあります。
 
手持ち式のルーペは種類も多く、どんなものを見るにも使用しやすいですし、携帯しやすいのですが、片手が使えませんし、長時間使っていると手が疲れてしまいます。
 
そこで、スタンド式のルーペや見たいものの上に置いて使うタイプのルーペもあります。両手が自由になりますが、持ち歩くことが困難ですし、机の上以外では使えません。
 
見たい場所を明るく照らすために、照明付きのルーペも売られています。細かい字でも見やすくなり非常に有効ですが、当然重くなりますし、値段も高くなります。電池も必要になります。(充電式やコンセント接続式もあります)
 
メガネにルーペを貼り付けたものも売られています。手が自由になりますが、高倍率の場合、見たいものに触れんばかりに目を近づける必要があります。
 
ロービジョン用のルーペで定評があるのはエッシェンバッハ光学というドイツのメーカーです。日本法人もあります。
http://www.eschenbach-optik.co.jp/

単眼鏡

双眼鏡はご存じですよね。片目用に作ってあれば単眼鏡です。小さい望遠鏡と思えばよいでしょう。ロービジョンの方では左右の視力が大きく異なることが多いので、ふつう単眼鏡を使います。
 
ふつうの双眼鏡は遠くにしかピントが合いません。2mくらい離れないと見えませんよね。ロービジョン用の単眼鏡は近くにピントが合うようになっており、20~30cmくらいから遠方まで見ることができます。
 
単眼鏡は視野が狭く、重たいのが欠点です。倍率が高くなるほど視野は狭く、また暗くなってしまいます。また、倍率が高くなるとピントを合わせるのが難しくなります。しかし、ルーペは近くのものを見ることにしか使えないので、比較的遠くのものを見るためには単眼鏡が必要です。
 
メガネに単眼鏡を貼り付けたものも売られています。両手が自由になって便利ですが、かなりごつい感じがするので、人前で使うのには抵抗感があるようです。また、相当重いメガネになるのも欠点です。

拡大読書器

見たいものをビデオカメラで撮って拡大してモニタテレビに映し出す器械です。
 
拡大読書器と言っていますが、決して読書だけに使うわけではありません。請求書を見たり、預金通帳を確認したりするのにも使えます。目薬のびんに書いてある細かい文字を読むこともできますし、爪を切るためにも利用できます。
 
ものを書くときにも有用です。たとえ長い文章は書かないとしても、いろいろな書類に記入したり、署名したりする機会は案外に多いものです。いちいち他人の手を煩わせなくても自分でできるということがどんなに素晴らしいことであるかは言うまでもありません。
 
拡大読書器は、拡大率を自由に変えられますし、ルーペなどに比べて高い拡大率が得られます。拡大率が高くできるので矯正視力が0.05以下の人で特に威力を発揮しますが、それ以上の視力がある人でも、ものを見る距離を自由にとることができので便利だと思います。
 
また、白黒を反転したり、コントラストを調整して見やすくすることができるのも利点です。
 
拡大読書器は大変有効な補助具ですが、買ったその日から何でもできるというわけではありません。うまく使いこなすには練習が必要とお考え下さい。見たいものにピントを合わせたり、可動テーブルを動かしたりするのにはコツが要ります。目の状態に合わせて自分なりの工夫も必要になってきます。

拡大読書器の入手法

視覚障害で身体障害者手帳をお持ちの方は、日常生活用具給付制度により、拡大読書器の給付を受けられます。限度額は19万8千円で、超過したときは差額を自己負担することになります。
 
拡大読書器は種類が多いので、手続きをする前によく調べ、あらかじめ機種まで選定しておきましょう。ここが最も時間をかけるべきところで、用途や目的をはっきりさせておかないと失敗します。字が書けないタイプを購入してしまって後悔したり、モノクロを選んで後でカラーにしておけばよかったと後悔したりすることがおこりがちです。御器所にある名古屋福祉用具プラザ(昭和区御器所通3-12-1 電話851-0051)で一部の機種は試してみることができます。
 
拡大読書器御希望の方は、南区の場合、南区役所民生課民生福祉係(電話823-9392)にお問い合わせ下さい。

2001.12