川本眼科だより 27後発医薬品 2002年5月31日
健康保険の後発品優遇処置は打ち切られましたが、患者さんの負担軽減効果が大きい場合は、できるだけ後発品を使うようにしています。
川本眼科では、4月から、処方する薬を徐々に「後発品」に切り替えています。
本日は、「後発品」とは何か、なぜ切り替えるのかということをお話しいたします。
後発品とは
後発医薬品とは、既に承認・販売されている薬のコピーです。単に「後発品」と言うのが普通です。「ジェネリック医薬品」という言い方もありますが、同じものと考えてよいでしょう。
新薬を開発すると、特許が与えられ、その薬の製造・販売を独占できます。新薬の開発には莫大な費用がかかるので、これは当然の権利と言えます。独占的に販売することにより、医薬品メーカーは開発費を回収し、利益を得るのです。
しかし、特許は無期限で認められているわけではありません。日本の場合、新薬の特許は10~20年で切れます。医薬品の場合、公共の福祉という観点がありますから、この制度は妥当だと思います。
新薬の特許が切れると、他の医薬品メーカーがその薬と全く同じ成分の薬を作って売ることができます。これが後発品です。これに対し元の薬を先発品と言っています。
後発品は、薬剤として先発品と同一であることを証明すれば、薬効や副作用情報については先発品のデータをそのまま利用することが認められています。つまり、開発費がかかりません。
そのため、評価が高く、よく売れた薬の場合、多くの医薬品メーカーが後発品を作ります。次から次へゾロゾロと現れるので、後発品のことを侮蔑的に「ゾロ」ということがあります。こういう言葉は品がないですから、あまり使わないほうがよいでしょう。
後発品の薬価は安い
医師が使用する薬については、厚生労働省が薬価を定めています。一般に先発品の薬価は高く、後発品の薬価は低くなっています。
先発品と後発品の薬価差はさまざまです。ほとんど薬価に差がないこともありますが、薬によっては半額以下になることもあります。さらに、後発品どうしでも差があります。
たとえば、アレルギーに対する目薬のケトチフェンでは、先発品「ザジテン」の薬価は1006円ですが、後発品の「ケトテン」は579円ですし、後発品の「ドラケルン」にいたっては、なんと262円で、先発品の約4分の1です。
(ドラケルンは販売中止になりました。後発品にはこういうことがよくあります。)
薬価にこれほどの差が生ずる理由があるのか、私にはよくわかりません。先発品には研究・開発費がかかるのに対し、後発品はかからないのが薬価が違う理由と説明されています。しかし、先発品は特許期間中に開発費を回収しているはずで、後発品がこれほど安く供給できるのなら、特許が切れたあとは先発品だって安くできるような気もします。
後発品の普及促進が必要
先発品は、臨床試験を実施した開発メーカーの製品であり、長年独占販売してきて知名度も高いわけで、なんと言ってもブランドイメージがあります。そのことが、多くの医師が先発品を使い続ける最大の理由です。
しかし、後発品も、薬効成分は同じですから、当然効き目も副作用も使い方も同じです。
同じものなら安いに越したことはありません。安いことが後発品を採用する最大の利点です。患者さんの自己負担も軽くなります。
さらに、健康保険の支払い機関も、薬価が安い薬を使ってほしいのです。患者さんの自己負担は0割~3割ですが、健康保険は7割~10割を払わなければならないので、それだけ切実です。健康保険の多くが赤字になっており、しかも、今後高齢者が増加すると保険がパンクするとも言われているので、健康保険側はできるだけ支払いを減らしたいのです。
後発品は、欧米では普及が進んでいて、後発品の使われる割合は、デンマーク60%、アメリカ49%、イギリス49%、ドイツ40%など非常に高くなっています。これに対し、日本は12%しか後発品が使われていません。日本の総医療費約30兆円のうち、薬剤費は約6兆円で、後発品が欧米並みに使われれば、年間1兆円近く薬剤費が節減できると試算されています。
厚生労働省は、今年4月、健康保険の点数を改定するにあたり、後発品優遇を打ち出してきました。もっとどんどん後発品を使えというわけです。こういう圧力は今後さらに強まると予想されます。
川本眼科も後発品に切り替え
川本眼科でも、厚生労働省の方針に従い、この4月から後発品をなるべく使っていくことにしました。
ただ、後発品専門の医薬品メーカーはたいてい弱小であり、薬を安定的に供給してくれるかどうか心配ですし、品質管理の面でも少々不安を感じます。副作用などの情報提供も期待できません。
そこで、後発品の中でも、先発品をたくさん出している大手メーカーの製品を優先して採用することにしました。例えば、参天製薬は点眼薬のメーカーとしては日本で最も大きく、トップシェアを誇っていますが、実は案外たくさんの後発品を作っています。こういう大手メーカーは何より信用を大事にしますから、安心感があります。
大手メーカーの後発品がない場合は、後発品専門メーカーの中でも、比較的大きく、実績のある会社の製品を採用することにしました。
そのため、後発品と言っても、薬価がそれほど安くないこともあります。
後発品が先発品と異なる場合
ふつう、後発品は、先発品のコピーであり、中身は可能な限り似せて作ってあります。
ただ、中には、先発品に工夫を加えて独自の製品にしていることもあります。
例として、参天製薬のカリーユニという白内障用の目薬を挙げてみましょう。これは、千寿製薬のカタリンという目薬の後発品です。有効成分はどちらもピレノキシンで、当然効き目には変わりがありません。ただ、カタリンという目薬は「用時溶解」といって使うときに薬を溶かすことになっていますが、カリーユニはそのまま使えます。また、カタリンは「冷所保存」が必要ですが、カリーユニは室温でかまいません。つまり、カリーユニのほうが保存性に優れているのです。
こういう場合は、積極的に後発品を選ぶ意味があります。もっとも、カリーユニは保存性が向上した反面、さす前によく振る必要がありますし、人によってはさし心地が悪いと感じることがあるようです。失ったものもあるというわけですね。
4月から、薬の投与量に関する制限が撤廃されましたが、川本眼科では「1ヶ月分をめど」とすることにいたしました。
内服薬は30日分まで、目薬は両目1日4回の場合で5㎜を3本を基準といたします。
1ヶ月分として不足するときは目薬を4本処方したりいたしますが、2~3ヶ月分といった長期の処方はしておりません。ご了承ください。
2002.5