川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 35医療保険 2003年1月31日

医療保険が各社から発売されています。次々に新商品が出るので目移りしてしまいます。
 
こういう保険には入っておいたほうがよいのでしょうか? 入るとしたらいったいどれがよいのでしょうか?
 
私(院長)は保険の専門家ではないのですが、逆に医療保険の会社とは全く利害関係がないので、第3者の立場からこの問題を考えてみたいと思います。

外来手術でも給付金がもらえる

眼科では、白内障手術がとても多いのですが、今日では白内障手術の大半が外来手術になっています。(施設により異なります)
 
外来手術であっても、医療保険か生命保険の医療特約に入っていれば、手術給付金がもらえます。
 
レーザー治療も、保険の上では外来手術として扱われるので、ふつう手術給付金がもらえます。
 
手術給付金がもらえるかどうかは、正確には約款次第なので、ご自分の加入している保険会社に問い合わせていただくことになりますが、ほとんどの会社が横並びで内容を決めているので、たいていは大丈夫です。
 
手術給付金をもらうには、保険会社が指定した書式による診断書が必要ですので、保険会社に連絡して必要な書類をもらってください。保険に関する診断書の場合、川本眼科では診断所料として現在千円いただいています。(一般的には3千円くらいが普通です)
 
残念ながら、郵便局の簡易保険の場合、外来手術では手術給付金がもらえません。簡易保険では入院が前提になっているのです。それも「入院保険金の支払われる場合」とありますから、5日間以上の入院の場合に限られます。白内障手術だと、入院しても1泊か2泊ということが多いですから、入院でももらえないかも知れません。

医療特約と医療保険

従来は、生命保険に医療特約をつけるのがあたりまえでした。最近では、単独の医療保険に入っていらっしゃる方が増えています。
 
死亡保険金で遺族の生活保障をする生命保険と、病気の時に自分自身の備えにする医療保険とは、本来性格が異なるものですから、別々に入ったほうが合理的です。どんな保証にいくら保険料を支払っているのかがはっきりしますし、途中で保険の見直しをして契約内容を変えるにも都合がよいですね。
 
生命保険の医療特約にするメリットは、若干保険料が少なくてすむことです。ただ、生命保険を解約して特約だけ継続することはできませんし、途中で見直して内容を変更するのは困難です。

医療保険がたくさん出る背景

最近、各社から医療保険が次々に発売されています。これは規制緩和によるものです。
 
従来は、医療保険などの第3分野の保険(生命保険・損害保険以外の保険)は、外資系保険会社と中小保険会社だけに販売が許されていました。規制緩和の流れの中で、2001年7月、第3分野の保険も全面的に自由化され、生保各社、損保各社が一斉に医療保険を発売しました。
 
当然、競争は激化し、次々に新商品が開発されるようになったのです。
 
つまり、医療保険がたくさん登場したのは、需要が増えたというより、保険会社の都合によるところが大きいわけです。

保険金支払いの期待値

まず、世の中にあまりうまい話はないのだ、という認識が大切だと思います。
 
保険というものは、保険会社が儲かるようにできています。保険会社は、各種の統計などから病気になる確率を予想し、保険金の支払額を精密に計算し、それに販売のための経費と儲けを上乗せして保険料を決めています。当然ですね。
 
保険の販売員の人件費も支払う保険料に含まれていますし、大々的な宣伝の費用も支払う保険料に含まれています。
 
こういう経費が馬鹿にならないので、確率論から言えば、出したお金(保険料の総額)に対し、受け取れるお金(支払われる保険金)の期待値はかなり少なくなってしまいます。
 
つまり、期待値を考えれば、何も保険に入らないのが一番得なのです。

いざという時の備え

そうは言っても、「いざという時の備え」も必要です。何かあって路頭に迷うようでは困りますよね。十分な貯えがあって、いざという時も困らなければ、保険は不要なのですが、よほどの大金持ちでない限り、そんなわけにはいきません。
 
「いざという事態に備える」という意味で最も基本になるのは生命保険でしょう。確かに一家の働き手が死んでしまうというのは大変な事態で、保険のありがたみが一番わかるところです。子供がいるなら必ず入る必要があるのではないかと思われます。
 
ただ、保険だか貯蓄だか訳のわからない複合商品は避けるのが無難です。お金を払っている目的が曖昧になりやすいからです。そういう意味では、掛け捨ての「定期保険」が良さそうです。
 
ちなみに、保険よりも共済のほうが、営利を目的としないので保険料が割安です。余剰金が出ると割り戻す制度もあり、有利になっています。ただ、あまり高額な保障は得られません。

医療保険は得か

医療保険は加入すべきでしょうか。
 
医療保険の商品をよく検討してみるとわかりますが、保険料が結構高く、何年も払い続けると相当な金額になります。
 
支払われる保険金はどうでしょうか。どんな病気でも入院が60日以上になることは少ないのです。そうすると、受け取る保険金はたいした額にはならないのがわかります。仮に入院1日5千円の保険に入っていて8日間入院しても4万円しかもらえません。60日入院しても30万円です。ところが、入院しなければ保険料は掛け捨てです。これなら、保険でなく貯金していたほうが良さそうです。誰でもかかりそうな病気に関しては、医療保険はそれほどありがたいとは言えません。
 
問題は、入院が長期化したときです。長くなる可能性が高いのは、ガンと脳血管障害です。そういう時は医療保険は確かにありがたいわけです。ただし、入院1日1万円の保険に入っていて1年間入院したとしても、365万円ですから、生命保険の保険金などと比べればびっくりするほどの金額にはなりません。支払い限度日数が120日程度の保険も多く、入院途中で保証が途切れてしまう危険があることには注意が必要です。
 
「いざという時の保証」こそ大事な点ですから、入院1日目から支払われるのか5日目から支払われるのか8日目からなのかは実は大した問題ではありません。短期入院なら入院費用もそれほどかからないのですから。条件が有利なら保険料が高くなっているだけの話です。一見有利そうに見えても、配当金がなかったり解約返戻金を低額に抑えていたりしていることに注意しましょう。
 
大事なのは支払い限度日数のほうです。60日を超える入院は少ないとはいえ、そういう時こそ保険が必要なのですから、どうせ加入するなら限度日数が長い保険を選ぶべきだと思います。もちろん保険料も高くなりますがそれはしかたのないことです。

2003.1