川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 36花粉症2003 2003年2月28日

花粉症のシーズンがやってきました。花粉症については4年前にも書いていますが、最近の話題を交えてもう一度取り上げてみたいと思います。
 
今年はスギ花粉の飛散量がかなり多いと予想されています。
 
花粉症は、本格的に花粉が飛び始める前に薬を使い始めたほうがよいとされています。早めの手当を心がけて下さい。

今年は花粉の飛散量が多い

スギの花粉は、前年の夏の気温が高く雨が少ないと飛散量が多くなることが知られています。このことから、今年は花粉の飛散量が多いと予想されています。スギの雄花のつきかたを調べて出す予測でも、「かなり多い」とのことです。
 
もっとも、花粉の飛散量予測は、いまだ精度が低く、今までも、「多い」と言われながら大したことがなかったことがしばしばありました。天気予報ほどあたらないようですね。

抗アレルギー剤は早めに使う

花粉症は、スギ花粉に対するアレルギーで、治療としては「抗アレルギー剤」が基本になります。ただ、抗アレルギー剤は即効性がなく、かゆいときに使ってもなかなかかゆみが収まりません。
 
かゆくなるとどうしても掻いてしまって、ますます炎症がひどくなるという悪循環をおこすので、できるだけかゆくならないように、かゆくなる前から薬を使っておくことをお勧めします。一般的には、花粉が本格的に飛び始める1~2週間前から抗アレルギー剤を使い始めることが推奨されています。
 
抗アレルギー剤には、目薬、点鼻薬、のみぐすりがあります。毎年目の症状だけおこすなら目薬だけでよいと思いますが、目も鼻もということならのみぐすりも使ったほうがいいでしょう。このあたりは患者さんの御希望もお聞きしてどうするか決めることになります。

ステロイドの目薬

抗アレルギー剤は安全性が高く、気軽に使うことができます。即効性はないものの、早めに使い始めれば、かなりの効果が期待できます。
 
しかし、花粉の飛ぶ量が多くなると、抗アレルギー剤だけでは不十分になります。それに、即効性に欠け、かゆくてかゆくてたまらない時に、抗アレルギー剤はすぐには効いてくれません。
 
こういう時はステロイド点眼薬の出番です。ステロイドは副腎皮質ホルモンとも言います。すぐ効いてくれるのが一番ありがたい点です。ステロイドには強さがいろいろあり、強いステロイドほどかゆみをとる効果も高いのです。
 
しかし、ステロイドの目薬は眼圧を上昇させることがあり、強いステロイドほど眼圧が上昇しやすいとされています。また、感染に弱くなるという問題もあり、これも強いステロイドほど問題になりやすいのです。つまり、強いステロイドは効果も強いが副作用も強いというわけです。
 
そんなわけで、ステロイドの目薬は、たくさんお渡しして勝手に使って下さいというわけにはいかない薬だということはご理解ください。2週間に1度はチェックを受けましょう。もちろん、きちんと診察を受けることをお勧めしますが、どうしても時間が取れなければ、最低限、眼圧チェックだけでも受けましょう。
 
もっとも、こういった副作用は、大勢の方が使っている中で、ごく一部の方におこる問題です。それに、仮に少々眼圧が上昇したとしても、中止すれば元に戻るわけで、それほど心配する必要はありません。
 
時々、後述する全身投与のステロイドと混同して、極端に怖がる方がいらっしゃいますが、ステロイドの目薬やステロイドの点鼻薬は、全身に対する影響はほとんどありません。ご安心下さい。
 
花粉症は、掻いてしまって炎症が強くなる悪循環が結構ありますから、必要な時にはやはりステロイドの目薬を使うべきだと思います。ちなみに、私(院長)も花粉症で、毎年1ヶ月くらいはステロイドの目薬や点鼻薬を使っています。

ステロイドの注射は危険

最近、「注射1本で花粉症が治る」などと称して、持続性のステロイド(副腎皮質ホルモン)の筋肉注射をする医師がいるようです。
 
確かに、持続性のステロイドを注射すれば、ステロイドの効果は1ヶ月以上続き、花粉症の症状は取れるでしょう。一見、抜群の効果があるわけです。
 
しかし、ステロイドの全身投与は、いろいろと副作用の心配があります。顔がまるくなったり、むくみがでたり、体重が増えたり、皮膚にボツボツができたり、生理の異常をおこしたりします。胃潰瘍やら糖尿病などの病気を誘発したり悪化させたりすることもありますし、うつ病になることもあるのです。
 
同じ全身投与でも、すぐに代謝されて体外に出ていくものなら、副作用がおこれば投与を中止すればよいのですが、持続性のステロイドでは体外に出すことができません。1ヶ月以上効果があるということは、副作用も1ヶ月以上続くということです。
 
つまり、ステロイドの筋肉注射は危険です。花粉症に対しては、ほかに安全な治療法がいろいろあるわけですから、こんな危険な治療法を選択する理由はありません。こんな治療を勧める医師がいたら、転医したほうがよいでしょう。

マスクを使おう

花粉症で困っていても、「マスクは絶対使わない」という方が多いようです。しかし、花粉が花粉症の原因なのですから、これを吸い込まないようにするのは一番大切なことです。マスクを使わないのに花粉症のつらさを訴えるのは、薄着をしているのに寒い寒いと言っているようなもので、あまり同情する気がしません。
 
マスクは、花粉用として目の細かいものも売っていますが、普通のマスクで十分です。普通のマスクでも、息の水分で湿った状態になると花粉を9割以上カットしてくれます。横のすきまから入ってくるほうが多いのです。

花粉症の治療法のまとめ

抗アレルギー剤の目薬をさしましょう。早めにさし始めるとよいでしょう。(ケタス・ドラケルン・リボスチンなど)
 
目も鼻も症状が出る方は、抗アレルギー剤ののみぐすりも使いましょう。これも早めにのみ始めるとよいでしょう。(アレジオン・アレグラ・ジルテックなど)
 
花粉が多くなって、抗アレルギー剤の目薬をさしていてもかゆくなってきたら、ステロイドの目薬をさしましょう。(オドメール・サンベタゾンなど)
 
ステロイドの点鼻薬も有効です。鼻をかんでから使いましょう。(フルナーゼなど)
 
ステロイドの目薬をさしている時は、2週間に1回は眼圧を測定しましょう。
 
マスクをしましょう。
 
外出時には、花粉が付着しにくいつるつるしたコートを羽織ることをお勧めします。
 
ステロイドの筋肉注射は危険ですから受けてはいけません。(ケナコルトなど)

2003.2