川本眼科だより 39ブルーベリーは眼にいいのか(2009改訂) 2003年5月31日
ブルーベリーの効果についてお尋ねをいただくことがしばしばあります。知り合いに勧められたり、子供が買ってくれたりするようです。効果を証明した論文があるとかテレビが取り上げたとか聞くと信じたくもなります。
既に買ってしまった方には申し訳ないですが、ほとんどの方にとっては無効だと思います。
金儲けのネタになっているに過ぎず、いかにも効果がありそうな広告にだまされないように注意して下さい。好きな方がブルーベリージャムを召し上がるのは構いませんが、大金を払ってエキス顆粒や錠剤を買う価値はありません。
ブルーベリー神話の由来
ブルーベリーが一時大ブームになっていました。今はだいぶ下火になりました。2003年当時は患者さんからもブルーベリーについての御質問をたびたびいただきました。
ブルーベリー神話が誕生したきっかけはテレビでした。「みのもんたのおもいっきりテレビ」とか「あるある大事典」とかいった番組がブルーベリーを取り上げました。ちなみに「あるある大事典」は後に納豆ダイエットの実験結果捏造で番組が中止になっています。
さらに健康雑誌が追随してブルーベリーは素晴らしいとはやしたてました。
NHKの「ためしてガッテン」が取り上げたのも大きかったようです。番組の内容自体は必ずしもブルーベリーを無条件に礼賛するような内容ではなかったのですが、NHKが取り上げたということで信じる人が増えた事実は否めません。
アントシアニンが豊富
ブルーベリーが眼に良いと言われるのは、アントシアニンという物質がが豊富に含まれているからです。ただし、クランベリー、カシス、プルーン、ぶどう、ラズベリー、紫イモ、小豆など多くの植物に含まれていて、決してブルーベリーだけの専売特許ではありません。
アントシアニンは、網膜にあるロドプシンという物質の再合成を助けます。ロドプシンには、網膜に映った映像を電気信号に変換して脳に伝えるという大事な役割があります。ロドプシンはものを見る時に光で分解されてしまいますから、つねに再合成する必要があります。その再合成を助けることから、アントシアニンが眼の病気に有効なのではないかと期待されたのです。
暗順応には効果がある
研究の結果、「暗順応が早くなる」という効果は証明されました。
明るい所から暗い所に入るとすぐにはものが見えません。時間が経つと目が慣れてきて、だんだん見えるようになります。このことを「暗順応」と言います。ブルーベリーを食べると、暗順応にかかる時間が短縮され、暗い所でも早く目が見えるようになります。ですから、「夜暗くなると見づらい」という症状には有効かも知れません。
ただし、望めばいくらでも明るい照明をつけることが可能な現代の生活において、暗順応がどれほど重要かは疑問です。
それに、アントシアニンの効果は長続きしません。暗順応が早くなるのは食べたその時だけの話です。毎日ブルーベリーを食べ続けなければ意味がありません。
疲れ目に効く?
アントシアニンが疲れ目に効くという説があります。いい加減な説で、私は信じません。
この説によると、コンピューターの画面を見続けた時などは網膜のロドプシンが大量に消費されるために網膜の感度が悪くなって疲れ目になるので、アントシアニンによってロドプシンの再合成を活発にさせれば疲れ目が改善するのだそうです。
えっ?初耳。普通、疲れ目というのは「ピントを合わせる毛様体筋を使いすぎて筋肉疲労をおこした状態」をさします。ロドプシンの不足が原因というのは新説、というより珍説です。
この説は商売上の必要から無理やり作った理屈だと思います。暗順応に効くだけでは薬としてあまり売れそうにないので、はるかに数が多い眼精疲労に効くと拡大解釈をして、証明もされていないことを宣伝しているのでしょう。
近視・乱視・白内障には無効
近視にも効く、乱視にも効く、老眼にも効く、白内障にも効く、目の病気すべてにブルーベリーが効く???
ここまで来ると完全にデタラメです。ロドプシンの再合成と何の関係もありません。だまされてはいけません。
うますぎる話に注意
うますぎる話には注意せよ、と言います。常識で考えれば何にでも効くなどということがあるはずがありません。
口コミは話に尾ひれがつきやすいものです。昔からそういうことはよくありました。お茶が日本に伝わってきた時は万能薬とされていたそうです。ヤツメウナギが目の病気すべてに効くともてはやされたこともありました。もちろんそんな効能があるはずありません。
健康食品は薬と違い、科学的に効能効果を証明する必要がありません。それだけいい加減な話が多いので御注意ください。
2003.5(2009改訂)